遠隔で工事状況を測定、確認できるVRシステム
オリエンタル白石株式会社
オリエンタル白石株式会社に対し、ニューマチックケーソン工法における作業室内の様子をデジタルツイン※1によりリアルタイムCGで再現し、遠隔で工事状況を測定、確認できるVRシステムを開発、提供しました。(2022年3月発表)
リアルタイムCGにより工事状況を遠隔で計測、確認可能にすることで業務効率と安全性を向上
オリエンタル白石が手掛けるニューマチックケーソン工法は、橋梁基礎や建築物の基礎、地下鉄や道路トンネルの本体構造物などで幅広く採用されている工法です。構造体下部に作業室を設け、作業室に圧縮空気を送り込んで地下水の浸入を防ぎ、地上と同じような地盤状態で掘削作業を行うことができます。
作業室には限られた人しか入ることができないため、オリエンタル白石では作業室内の掘削機をロボット化、ネットワーク化した自動運転システムにより、運転作業者数の低減を実現しました。しかしながら、日々の作業室内の地山の状態や掘削状況の計測確認については、作業室内で人力あるいは作業室内に設置されたカメラ映像により行う必要がある、という点に課題がありました。
当社がオリエンタル白石に対して開発、提供したVRシステムは、自動運転システムが出力するセンサーで計測された作業室内の三次元形状データなどを、ケーソン躯体やショベル、設備などの3Dモデルと併せ、リアルタイムCGによりVR化するものです。ユニティ・テクノロジーズ社が提供するゲームエンジン「Unity(ユニティ)」で開発し、地中掘削ロボットの稼働状況の監視、地盤のDEM※2データの可視化、掘削地山形状に対応した作業室内体積計算等の自動化を実現しました。
このVRシステムにより、工事担当者は、長時間作業室内に入らずとも地上にいながら工事状況の計測作業が可能となり、業務効率が向上します。また、施主や見学者は、遠隔でも作業室内にいるように工事の様子を把握できるようになり、安全性も改善されます。
なお、VRシステム開発・提供にあたり、オリエンタル白石の亀井様より下記のコメントをいただいております。
ニューマチックケーソン工法は、高気圧な地下空間という限られた人間しか入ることの許されない環境を舞台とした非常に特殊な工事です。そのため、関係者の方々に地下空間の工事状況を正確にお伝えするのが難しく、また説明をされている側も、状況を頭の中で想像することしかできないという課題がありました。それが今回のVRシステムにより抜本的に変革します。地下空間でロボットが収集したデータをVRで再現、人間は地上にいながらまるで地下空間にいるかのように工事状況を把握することができます。工事現場とゲームという一見全く関係のない分野の技術が交差することで、建設業のテクノロジーが飛躍的に進化する。そんな未来を目指してこれからも邁進して参ります。
オリエンタル白石株式会社
技術本部 技術部 機電チーム 主任 亀井 聡
※1 デジタルツイン:現実空間に実在している物体や環境に関する情報を収集し、仮想空間に再現する技術
※2 DEM(数値標高モデル、Digital Elevation Model):立体地図を生成する際の基礎データとして最もよく使われる、各種測量法により計測された地表面の地形のデジタル表現