工場プレスライン干渉検証のための3Dデジタルツイン
株式会社SUBARU
株式会社SUBARU(以下「SUBARU」)に対し、ゲームエンジン(※1)を活用した3Dデジタルツイン(※2)による工場内のプレスライン搬送シミュレーション環境を、株式会社アルゴグラフィックス(以下「アルゴグラフィックス」)と株式会社マンカインドゲームズ(以下「マンカインドゲームズ」)との3社共同開発により構築・提供しました。(2024年08月06日発表)
型間搬送上の干渉を事前に発見し、不具合を設計検討の際に織り込む
SUBARUでは、工場内のプレスラインにおいて、型間搬送上の干渉を事前に発見し、不具合を設計検討の際に織り込むことを目的とした実際の動作を仮想空間で再現するトランスファープレス機等の搬送シミュレーション環境を検討されていました。
このたびのプレスライン搬送シミュレーション環境は、プレス型データの配置からシミュレーションの実行、干渉チェック、チルト手動設定、実行結果の出力までを、リアルタイム3DCGによるデジタルツインで実現するものです。当社は、これまでの豊富なデジタルツインの開発実績を背景に、SUBARUと多くの取引実績を誇るアルゴグラフィックスと、ゲームエンジンに関する卓越した技術を有するマンカインドゲームズとの協業体制のもと、SUBARUからの委託を受け、ユニティ・テクノロジーズ社が提供するゲームエンジン「Unity(ユニティ)」で開発しました。
機能拡張や汎用性を考慮し、Unityで開発
Unityベースで開発することにより、今後の機能拡張や汎用性も考慮しています。
Unityの物理計算機能により、指定するプレス型に対するパネルの干渉シミュレーションだけではなく、カムの挙動シミュレーションもできるため、カム動作の再現から設計時におけるカムのタイミング検討にも利用することが可能です。
なお、このたびのプレスライン搬送シミュレーション環境について、SUBARUの柴田様より以下のコメントをいただいております。
BEV※3の開発をはじめ自動車業界を取り巻く大きな変化の流れの中で、「柔軟性と拡張性」のある生産技術の在り方が求められています。プレス生産においても従来の手法に捉われない新たな手法として、再現性や拡張性に優れた「Unity」の活用を進めてきました。今回はプレスラインの搬送シミュレーションをシリコンスタジオ様およびアルゴグラフィックス様、マンカインドゲームズ様と共に開発する事により短期間で柔軟性のあるシステムを構築する事ができました。
このシステムではサーボプレスへの適用、干渉チェックの効率化や新規ラインの導入、ライン改造への柔軟な対応を実現しています。今後は、当社プレスラインの特徴である製品別チルト搬送への対応や新規モーション検討、物理エンジンやAIの強化学習の活用なども視野に入れ開発を進めていき、競争力のあるプレス生産の実現を目指してまいります。株式会社SUBARU 車体生産技術部 車体企画課 柴田康徳
※1 ゲームエンジン:コンピューターグラフィックスによるアプリケーションやコンテンツ開発において必要なライブラリやツールなどの機能がまとまったGUIベースの統合開発環境です。高品質な3Dグラフィックスを比較的簡単に作成できる仕組みが揃っているため、近年はゲームや映像コンテンツのみならず、自動車や建築、製造業などの産業分野で活用が進んでいます。米Unity Technologies社の「Unity」と、米Epic Games社の「Unreal Engine」が高いシェアを誇っています。
※2 デジタルツイン:現実空間に実在している物体や環境に関する情報を収集し、仮想空間に再現する技術
※3 BEV(Battery Electric Vehicle):バッテリーに充電した電力のみを動力源としてモーターを駆動し走行する電気自動車