- 自動車・モビリティ業界
2024.06.07
自動運転(AD)の実現に向けた技術的課題と対策。おさえるべきポイント
海外ではすでに自動運転技術の実用化が進んでおり、国内でも実証実験が進められています。
社会実装に向けては技術の発展だけでなく、交通インフラや法律、保険制度の整備、国際間でのルール策定、社会的受容性の醸成など、さまざまな取り組みが必要です。
本記事では、自動運転(AD)と先進運転支援システム(ADAS)の技術面にフォーカスして、課題と対策について紹介していきます。
自動運転(AD)と先進運転支援システム(ADAS)
自動運転(AD)と先進運転支援システム(ADAS)は、どちらも車両の運転を支援する技術であるものの、目的と機能は異なります。
ここでは、それぞれの技術概要と、そこに関わる法規則について確認しておきましょう。
自動運転(AD)とは
自動運転(AD:Autonomous Driving)とは、ドライバーの介入なしに車両が運転操作を行う機能です。
自動運転の目標は、車両が自律的に目的地に到達することです。
自動運転の度合いは、米国自動車技術者協会(SAE)によってレベル1からレベル5に分類されています。
具体的には、レベル1~2が「運転支援」とみなされ、システムによる完全な自動運転はレベル3以上で実現されます。
先進運転支援システム(ADAS)とは
ADASとは「Advanced Driver-Assistance Systems」の略称です。
ドライバーの運転操作を支援するさまざまなシステムで、近年、多くの新車が標準的に搭載しています。
人が車を運転する際には、認知・判断・操作という3つの要素が必要です。
ADASの特徴は、これらの要素のうち少なくとも1つを支援することにあります。
例えば、前方に障害物がある場合には警告音を発する機能や、車間距離に応じて速度を制御する機能が搭載されることが一般的です。
自動運転に関する法規制
自動運転の車に関する規制は、車両の安全性を確保することが目的です。
具体的には「許容できないリスクが存在しないこと」と定義され、これに基づいて自動運転車の安全性を確保するための規制が設けられています。
例えば2020年4月には、道路交通法改正により自動運転レベル3の解禁と装置の義務化、道路運送車両法改正により自動運行装置の規定があり、2023年4月にはレベル4の移動サービス実装とICT活用の法改正が行われました。
諸外国と日本の自動運転の変遷と現状
近年、自動運転技術は世界中で新たな産業として注目されており、競争が激しくなっています。
また2018年には、自動運転タクシーの実用化も始まりました。
ここでは、諸外国と日本における自動運転の遍歴と現状をご紹介します。
海外における自動運転の状況
海外では、自動運転の車が積極的に活用されはじめています。
例えば、カリフォルニア州の規制当局は、2023年8月10日にサンフランシスコ市全域で完全無人のタクシーサービスの拡大を承認しました。
これにより、AlphabetのウェイモやGMのクルーズなどが、電気自動車を利用した自動運転の移動手段を提供できるようになりました。
しかし、自動運転車が増えることで事故のリスクも増大し、住民の間で懸念が高まっています。
日本の自動運転
日本でも、自動運転の実証実験は進行中ですが、実用化までにはまだ時間がかかる見通しです。
特に、右左折時の合流タイミングや、安全監視員による自動運転車両の遠隔監視支援からの移行、運行コスト負担、地域の商業施設へのアクセス改善、路上駐車車両の回避技術、交通マナーの普及などに関して、さまざまな課題が浮上しています。
また、自動運転の実証実験を行うフィールドが少ないことも、日本で普及が進まないことの原因の1つです。
日本国内の自動運転については、レベル別に見ると以下のような現状です。
レベル2(部分運転自動化)の一定条件付きでハンドルから手を離して運転できる「ハンズオフ機能」を搭載した自動車には、日産「ProPILOT2.0」、ホンダ「Honda SENSING Elite」、トヨタ「Advanced Drive」、スバル「アイサイトX」、などが現時点ではあります。
今後、レベル2の機能が搭載された車種は拡大していく見込みです。
自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の一定条件付きですべての運転操作が可能なシステムを搭載した自動車は、2020年4月の改正道路交通法と改正道路運送車両の施行により、公道走行が可能となっていますりました。
一般乗用車としては、ホンダの新型「LEGEND」から自動運転レベル3の搭載が始まりましたっています。
自動運転レベル4(高度運転自動化)の一定条件付きですべての運転操作をドライバーやオペレーターを介入せず行えるシステムを搭載した自動車は、従来の運転と区別するために「特定自動運転」と定義した運行ルールを設けており、福井県永平寺町では自動運転レベル4のサービスが始まっています。
自動運転レベル5(完全運転自動化)の条件や状況に限らず、手動運転で行うことをすべて自動運転でカバー可能なシステムを搭載した自動車は、スタートアップのTURINGが自動運転レベル5のEV開発を2025年をの実現を目途に進めています。
自動運転の技術的課題と対策
自動運転を社会実装するためには、さまざまな技術的課題を解決しなくてはなりません。
ここでは、自動運転の技術的課題と対策をご紹介します。
レアケースのシナリオ学習データの作成
自動運転の技術的課題の1つは、レアケースのシナリオを学習データとして網羅的に作成することです。
例えば、前方の車線が荷物の上げ下ろしや工事で塞がっている場合、自動運転システムはどのように対応すべきかを判断する必要があります。
対策としては、シミュレーションを用いて実際の道路状況を再現し、さまざまなシナリオを生成することが考えられます。
法整備の問題
自動運転車が事故を起こした場合、その責任を誰が負うのかが議論となります。
これに対する対策として、法改正が進んでおり、レベル4に向けた法改正が進行中です。
サイバー攻撃への対策
自動運転の車は、サイバー攻撃の標的になる可能性があります。
このリスクに対処するため、AI特許を活かしたサイバーセキュリティ技術が開発されている状況です。
AIやセンサーにまつわる技術の高精度化
自動運転車は自律的に運転操作を行います。
そのため、周囲の環境を正確に読み取るAIやセンサー技術の高精度化も不可欠です。
高精度3次元地図の整備と更新
自動運転車が道路状況を把握するためには、全道路における高精度3次元地図の整備と更新が必要です。
また、自動運転車が周囲の情報を外部から受け取るためには、新たな基地局やネットワークも整備しなくてはなりません。
シリコンスタジオでは「リアルタイム3DCGによる自動運転開発支援」が可能
シリコンスタジオは、自動運転(AD)の開発に必要な学習データとなるシーンやツールを、ゲームエンジンを活用したリアルタイム3DCGで制作し、提供しています。
エンターテインメント業界で培った3DCGの知見を活かし、ゲームエンジンを利用した走行シミュレーター開発のノウハウと独自開発による高品質な市街地アセットパーツを組み合わせている点が特徴です。
これにより、お客様の多様なニーズに対応し、開発期間の短縮を実現します。
また、既存のドライビングシミュレーターの資産を活用したビジュアル品質の向上や各種機能の追加も可能です。
これらの特性により、シリコンスタジオの「リアルタイム3DCGによる自動運転開発支援」は、自動運転技術の開発を効率的に進めるための強力なツールだといえます。
関連ページ:Silicon Studio「ドライビングシミュレーター向けソリューション」
課題と対策を把握し自動運転の社会実装を実現しよう
自動運転の車を普及させ、多くの方が利用できるようにするためには、以下の課題を解決しなくてはなりません。
- レアケースのシナリオ学習データの作成
- 法整備の問題
- サイバー攻撃への対策
- AIやセンサーにまつわる技術の高精度化
- 高精度3次元地図の整備と更新
すぐには解決できない課題も含まれますが、自動運転の車を社会実装するために越えなくてはならない壁であることを認識しておくことが必要です。
シリコンスタジオでは、「自動車・モビリティ業界」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
自動車業界/モビリティ業界の課題に直面している事業者の方は、お気軽にご相談ください。
■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部
自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。
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