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医療DXを加速させる3Dデジタルツインがもたらす手術革新と未来の医療
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2025.05.09

医療DXを加速させる3Dデジタルツインがもたらす手術革新と未来の医療

もし、患者一人ひとりの身体を精密に再現した「もう一人の自分」で、手術の成功率をさらに高めることができるとしたら?そんな未来が現実のものとなりつつあります。中でも注目されているのが、3Dグラフィックスと医療データを活用した3Dデジタルツイン技術です。
本記事では、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる3Dデジタルツインの概要から具体的な活用事例、今後の展望までをわかりやすく解説します。

※医療DXについては、求められる背景と医療業界の課題、方向性を示す重要施策としての医療DX令和ビジョン2030、主な取り組みなどについて別のコラムで詳しく解説ています。

【コラム】医療DXとは?導入によるメリットと主な取り組み

医療DXにおける3Dデジタルツインとは

医療業界では、医療DXの一環として、どのような場面、用途で3Dデジタルツインが活用されているのでしょうか。まずは医療分野における3Dデジタルツインの概要、役割について解説します。

3Dデジタルツインの定義と仕組み

3Dデジタルツインとは、現実世界を仮想空間に再現する技術です。
医療分野では、例えば患者の身体や臓器の3Dモデルをデジタルツインとして構築し、治療や手術のシミュレーションに活用することが考えられるでしょう。
医療画像データや検査データを基に作成された患者の体内のデジタルツインにリアルタイムで更新されるデータを反映することにより、遠隔での現実に近い高い精度の診断や病状の進行予測、患者ごとにカスタマイズされた最適な治療計画の実現などをもたらすことが期待できます。

従来のシミュレーション技術では、その多くが静的なモデルや過去のデータをもとにした予測が中心でした。3Dデジタルツインは、IoTセンサーや医療機器などから収集されるリアルタイムデータを反映し、現実世界と仮想世界とのタイムラグが少ない相互フィードバックが可能であることが特徴です。また、デジタルツインは複数のシナリオを並行して実行できるなど、柔軟性が高い点も従来のシミュレーションとは異なります。

なお、デジタルツインの構築に不可欠なデータやツール、技術については過去のコラムでもご紹介していますのでご参照ください。

【コラム】デジタルツインとは?使われる技術と活用事例を解説

3Dデジタルツインが果たす役割・用途と期待される効果

医療分野において、3Dデジタルツインは多くの効果やメリットをもたらします。ここでは具体的な役割・用途と期待される効果をご紹介します。

手術シミュレーションと治療計画の精度向上

手術前のシミュレーションを通じて、最も安全で効果的な手術方法を確認できることも3Dデジタルツインを活用するメリットです。
患者個別の3Dモデルを作成する3Dデジタルツインは、リアルな仮想空間での手術シミュレーションを実現します。触覚フィードバックやリアルタイムの視覚情報によって実際の操作感覚を習得したり、出血や合併症など現実的な状況を再現し、迅速な問題解決能力を養ったりすることが可能です。3Dデジタルツインの活用は、最適な手術方法を検討し、手術中の予期せぬトラブルを防ぐことで成功率を高め、リスクを軽減する役割を果たします。

3Dデジタルツインを活用することで、患者にリスクを負わせずに安全なシミュレーションが可能となり、手術時間の短縮や患者への身体的負担の軽減、治療計画の精度向上にも寄与すると考えられます。患者の健康状態に応じた最適な治療方針を提供することが可能です。また、新人外科医の学習曲線を短縮し、早期に実践的なスキル習得が可能となるため、トレーニングコストの削減も期待されます。

患者個別化医療(パーソナライズド医療)の実現

3Dデジタルツインは、患者の遺伝情報や生活習慣、病歴など健康データを詳細に収集し、個別化されたデジタルモデルを作成します。患者の身体の状態を仮想空間上で再現し、病気の早期発見や進行状況の予測が可能になるのがメリットです。患者ごとに最適な治療方法をシミュレーションすることで、パーソナライズド医療の実現も期待されます。治療効果が高まり、副作用を最小限に抑える効果がもたらされるでしょう。

また、患者の身体モデルを構築し、関節運動や筋肉の状態を詳細に分析することで、患者ごとに最適化されたリハビリプランも提供することができるようになります。支援ロボットと連携し、患者の身体動作や負荷状態をシミュレーションで評価することも考えられるでしょう。ロボットが適切な補助動作を提供し、機能回復効果がさらに高まります。

さらに機械学習やディープラーニングを用いて、患者のデータから異常を検知し、特定の疾患の進行を予測することも可能です。個別化された治療が可能になり、診断精度の向上が期待できます。

遠隔医療や在宅医療の強化

3Dデジタルツイン技術を用いて患者の健康状態を遠隔でモニタリングすることで、遠隔医療や在宅医療を強化します。
患者が装着したウェアラブルデバイスなどから得られるデータをリアルタイムで収集し、仮想空間上に再現された患者の3Dモデルに反映させることにより、医師は患者が遠隔地にいても詳細な病状を把握することが可能です。必要な診断や治療を迅速に提供することができます。

また、患者が自宅で実施するリハビリトレーニングのプランをデジタルツイン上で再現し、仮想空間で体験させ、その効果を検証・分析することも可能です。通院が難しい患者や、遠隔地に住む患者でも質の高い医療を受けられるようになります。

患者体験の向上と治療環境の可視化

3Dデジタルツイン技術を用いることで、患者自身の身体や臓器を3Dモデル化し、健康状態を視覚的に理解できるようにします。これにより、患者は自身の病状や治療内容を直感的に把握しやすくなり、心理的負担の軽減につながるでしょう。例えば腫瘍の位置や進行状況を3Dで再現し、治療計画による病状の変化のシミュレーション結果を患者と共有すれば、治療への理解と納得感の向上が期待できます。
また、3Dデジタルツインによって病院のエントランスから治療室までを仮想空間上に再現することで、患者やその家族は現場に足を運ばずとも病院を見学し、実際の治療環境を事前に理解できます。

各エリアにタグ付けされた情報を提供することで、利用者にとって直感的かつ分かりやすいバーチャル病院見学を実現できます。患者の不安感を軽減し、安心して医療を受けられる環境が整えられます。

3Dデジタルツインと医療DXの詳細は、以下の記事をご参照ください。

【コラム】DXを実現させる3Dデジタルツイン。導入までのステップを知っておこう
【コラム】医療DXとは?導入によるメリットと主な取り組み

医療分野における3Dデジタルツインの活用事例

ここからは、医療分野における3Dデジタルツインの具体的な活用事例についてご紹介します。

神戸低侵襲がん医療センターにおける活用事例

神戸低侵襲がん医療センターは、放射線治療や薬物療法など低侵襲治療に特化したがん専門病院です。全国から多くの患者が訪れています。
神戸低侵襲がん医療センターでは、初診時の患者や家族が抱える「未知の環境への不安」を軽減するため、治療室や病院施設をリアルに再現する3Dデジタルツイン技術を導入しました。エントランスから治療室、病室まで院内全体を仮想空間上で再現しています。また、放射線治療を行う3つの治療室(サイバーナイフ、トモセラピー、トゥルービーム)もリアルに再現し、患者が治療室の構造や設備、雰囲気をオンラインで確認することが可能です。

この取り組みは、患者とその家族が病院の環境を事前に知ることができるようになり、患者にとっての心理的負担を軽減し、治療への心構えを整えることに貢献しています。また、スタッフの業務効率も向上し、患者や家族のストレスを減らすことにもつながっています。

内視鏡手術のシミュレーションによる医療DX

コニカミノルタが2018年から提供している「Plissimo XV」は、内視鏡を用いた脊椎手術を仮想空間上でシミュレーションできるデジタルツインアプリケーションです。患者のCTやMRI画像を読み込むことで、患者ごとに脊椎と内視鏡視点の画像やドリルなどの器具を仮想空間に3Dで再現し、精密な手術の準備や計画、トレーニングによる技術の習熟に役立ちます。
また、脊椎や肝臓などの軟組織臓器を3Dで描画し、切除や変形のシミュレーションが可能です。切削後に脊椎内部の神経がどの程度見えるかなどを確認することができます。

手術の難易度が高く、技術の習熟に時間がかかる内視鏡手術において、医療DXを推進する重要なツールといえるでしょう。

手術ロボットの3Dデジタルツイン活用による効率化

オプティムが提供する「MINS」は、医療用手術支援ロボット「hinotori」に搭載された、各種センサー情報、内視鏡映像、手術室全体の映像などをリアルタイムで収集・解析・提供するオープンプラットフォームです。手術ロボットの稼働状況やエラー情報をリアルタイムで収集・解析し、トラブル対応に活用できます。
MINSでは、デジタルツイン技術を活用することで、手術中のロボット動作や術者の操作を視覚的に再現し、遠隔サポートセンターでの状況把握が可能です。手術ロボットの動作解析による手術効率の向上にも活用できます。
また、手術室の状況をライブで映像配信することにより、遠隔地から手術室の状況を正確に把握することが可能です。

このようなデジタルツイン技術は、手術ロボットの運用を最適化し、医療現場での効率性と安全性を高める重要な役割を果たしています。さらに、AIや6G技術と組み合わせることで、遠隔手術やトレーニング環境の向上も期待されている状況です。

3Dデジタルツインの課題と今後の展望

ここでは、3Dデジタルツインの課題と今後の展望について解説します。

データ収集・管理の課題とセキュリティ対策

3Dデジタルツインでは、物理的な対象物やシステムをデジタル空間に再現するために、多量のデータを収集・管理する必要があります。このデータは多くの場合、企業や顧客に関する秘匿性の高い情報を含むため、セキュリティとプライバシーの保護が重要な課題です。データ漏洩リスクへの対応が重要となります。

例えば、データの暗号化やアクセス制御、定期的なセキュリティ監査とリスク評価が求められます。また、データガバナンスとコンプライアンスポリシーを定め、従業員のセキュリティ意識を高めるための教育とトレーニングも重要です。

高精度モデル構築のためのコストと技術的ハードル

3Dデジタルツインの構築には、高精度な3Dモデルを開発するための技術的ハードルとコストに大きな課題があります。
高精度な3Dモデルを構築するには、CTやMRIなどの医療画像データを収集し、それらを3Dモデル化するための高性能な専用ソフトウェアやハードウェアが必要です。患者の臓器や身体全体の動きをリアルタイムで精度の高い物理シミュレーションするためには、高度な物理モデリング技術と計算能力が求められます。これらの設備導入には多額の初期投資が必要となるでしょう。また、異なるデータ形式を統合し、3Dモデルに正確にマッピングすることは、技術的にも容易なことではありません。

医療向けの高精度な3Dデジタルツインを構築・運用するには多額のコストと高度な技術力が必要とされるものの、多くのメリットが期待できるため、標準化の推進と継続的な研究開発が重要です。

医療従事者医師や患者への導入時の教育・普及活動

医療分野でのデジタルツインの導入において、医療従事者や患者の理解が不十分であることが課題として挙げられます。
現状は医療従事者が新しい技術を理解し、活用するための教育リソースが不足しており、現場での導入が進みにくい状況です。デジタルツインを効果的に活用するには、医師や看護師がその技術を正しく理解し、日常診療に取り入れるためのトレーニングが欠かせません。

また、デジタル技術に対する不安や疑問を持つ患者も多く、患者自身がその技術を理解し、納得して治療を受け入れることが重要です。医療従事者が丁寧に説明する必要があります。

AIとの連携による3Dデジタルツインの未来展望

AIと3Dデジタルツイン

AIと3Dデジタルツインの連携は、将来の技術発展において非常に重要です。AIを活用することで、デジタルツインが収集する膨大なデータを分析し、将来的な予測やプロセスの最適化を行うことが可能となります。
医療分野におけるAIと3Dデジタルツインの連携は、診断、治療、患者ケアの質を向上させる可能性を秘めており、今後の医療の在り方を大きく変えると期待されています。

生成AIを活用することで、デジタルツインモデルの構築コストが削減され、効率的な品質の向上も期待されるでしょう。また、AIが患者ごとのデータを解析し、最適な治療法や予防策を提案することで、個別化医療の進展も図られると考えらえます。未来予測や自律的な意思決定も可能になるかもしれません。

3Dデジタルツインを医療DXの推進に活用

手術支援から個別化医療まで幅広く活用される3Dデジタルツインは、AIやメタバースと融合することで、未来の医療を根本から変える可能性を秘めています。診断精度や手術成功率の向上、患者体験の改善にも寄与し、AIとの連携により今後さらなる進化が見込まれるでしょう。

3Dデジタルツイン技術の活用は医療DXにおいて重要です。シリコンスタジオでは、ゲームエンジンやOmniverseといった3DプラットフォームとROSとの連携による手術ロボットのシミュレーション環境やAIの学習のための教師データ生成など、医療分野における3Dデジタルツイン技術の活用実績とノウハウを多数有しております。ぜひ、シリコンスタジオにご相談ください。

関連ページ:シリコンスタジオ「活用シーン|医療・医薬」

■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

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