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2024.06.28
デジタルツインとは?使われる技術と活用事例を解説
近年、デジタルツインは、データ収集の基盤となるだけでなく、現場のリアルタイムな把握や、現実には困難なシミュレーションの実行環境としても注目を集めています。
本記事では、デジタルツインの概念から実際の活用事例まで、わかりやすく解説します。
デジタルツインとは
デジタルツインとは、現実世界の物体や環境から得たデータを利用して、物理的なシステムやプロセスをデジタル上に再現する技術です。
現実と仮想空間の3Dモデルが「双子」のようになることから、デジタルツインと呼ばれています。
近年、デジタルツインはIoTやAI、ロボティクスなどの進化、データの収集が容易になったことなどにより注目度が高まっています。
製造ラインや物流プロセスの最適化、エネルギー効率の向上、交通渋滞の緩和、人間行動の予測など、さまざまな分野で活用されている状況です。
デジタルツインの概要や変遷
デジタルツインの用途は幅広く、これまで航空産業や製造業での活用から始まり、国土計画・都市計画、防災などへと展開されてきています。
世界のデジタルツインの市場規模は2020年の2,830億円から2025年には3兆9,142億円11に成長すると予測されています。
データの統合などの課題はありますが、技術の進歩とともにさらなる発展が期待されています。
出典:総務省「デジタルツイン/第2部 情報通信分野の現状と課題」
メタバースとの違い
デジタルツインとメタバースは、共に仮想空間を利用した技術ですが、目的や用途は異なります。
デジタルツインは、現実世界の情報とデータをリアルタイムに同期させ、現実世界と仮想世界を連動させることで、現実世界の効率的な管理・運用を目指します。
一方、メタバースはインターネット上の仮想空間で再現するものが実在しているものかどうかを問わない点が異なります。また、ユーザーがアバターを用いて交流やゲーム、ショッピングなどを行うケースが多い点も特徴です。
メタバースは新しい世界を「創造」する空間を指し、デジタルツインは現実世界の環境を「再現」する技術であるといえるでしょう。
出典:総務省「情報通信白書令和5年版 デジタルツイン」
デジタルツインが求められる背景・課題
デジタルツインは、NASAの機械的な問題によってアポロ13号に搭乗している人を救出する際に活用され有名になりました。
少し前までは、航空宇宙や重機市場などの高価なものへの活用に限定されていましたが、デジタルツインに統合できるビッグデータ分析やAIなどのITの進化によって、コスト効率も進み、産業界での活用がされるようになってきました。
これまでは物理空間の情報をデジタル化するにはデータの取得が容易ではなかったり、手動での作業に時間を要したりなど、取り組む上で越えなければならないハードルが多数あり、そのため限られた情報しか仮想空間に反映されませんでした。
しかし、センサーなどIoTによりリアルタイムかつ自動的にデータを取得できるようになり、デバイスの進化で3Dデータが計測しやすくなったことから、物理空間を仮想空間に再現することが容易になりました。
ここからは、デジタルツインによる3Dシミュレーション環境の構築に不可欠なデータやツール、技術を見ていきましょう。
3Dモデル
3DモデリングツールにはAutodesk 社の各種3DソフトウェアやBlender、
ダッソー・システムズ社の3DEXPERIENCEプラットフォームなどが挙げられます。CAD、BIMなどの設計データ、3Dスキャナーによる点群データやフォトグラメトリなどのデータをベースにモデリングしたり、PLATEAUに代表される都市モデルを活用したりすることもできます。
ゲームエンジン
コンピューターグラフィックスによるアプリケーションやコンテンツ開発において必要なライブラリやツールなどの機能がまとまったGUIベースの統合開発環境です。
高品質な3Dグラフィックスを比較的簡単に作成できる仕組みが揃っているため、近年はゲームや映像コンテンツのみならず、産業分野におけるデジタルツインでの活用が進んでいます。
米Unity Technologies社の「Unity」と、米Epic Games社の「Unreal Engine」が高いシェアを誇っています。NVIDIA社のOmniverseやMicrosoft社のAzure、Matterport社が提供するMatterport(マターポート)なども3Dデジタルツインのプラットフォームとして注目されています。
各種データとの連携
デジタルツインは、IoTデバイスから収集したリアルタイムのデータや、3Dスキャンなどの技術を使用してキャプチャされたデータ、さらにAIによる分析結果など、多様なデータを統合して利用しなくてはなりません。
データを活用することにより、現実世界の状況をリアルタイムで反映し、詳細な分析や予測を行うことが可能になります。
そのためには、各種データを取り込むことができるプラットフォームやサーバー/ネットワーク環境が必要です。
プラットフォームとしては上述のゲームエンジンやOmniverse、Azureなどが該当します。
デジタルツインのユースケース
デジタルツインの主なユースケースは、以下のとおりです。
- 走行、運転シミュレーション環境
- 人流、群衆シミュレーション環境
- 工場ライン最適化
- 都市開発(東京都、静岡県)
- 災害対策、防災(東京都による能登半島地震、あいおいニッセイ)
- 現場進捗レビュー環境
以下で、それぞれの内容を確認しておきましょう。
走行・運転シミュレーション環境
デジタルツインは自動運転の開発において重要な役割を果たします。
仮想空間内での自動運転車の走行は、実際の公道走行に加えて、コンピューター上でのデータ収集と効果的な分析が可能です。
自動運転車の安全性と信頼性が向上し、実世界での走行における性能向上につながります。
人流・群衆シミュレーション環境
デジタルツインは都市の人々の動きをシミュレーションするために使用されます。
人々の行動パターンや人口密度などを分析し、都市計画やイベント管理、防災対策などに活用することが可能です。
工場ライン最適化
工場の生産ライン全体をデジタルツインで再現することで、実際に製造する前に無駄な部分を洗い出せます。
また、生産工程の手間や時間を短縮することも可能です。
都市開発
東京都と静岡県では、都市開発にデジタルツインが活用されています。
建物や道路などのインフラ、経済活動、人の流れなど、さまざまな現実空間の要素を仮想空間上に再現し、防災やまちづくりに活用している状況です。
災害対策・防災シミュレーション
デジタルツインは災害対策や防災シミュレーションにも活用されています。
例えば、東京都はデジタルツインを利用して、令和6年の能登半島地震の被害状況を可視化しました。
被災自治体職員や関係者は被害状況を視覚的に把握し、復旧・復興活動に効果的に対応できる見通しが立ちます。
またシリコンスタジオは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社に向けて、災害時の浸水情報を3Dで表示する「3D浸水ハザードマップ」を自治体向けのPoC(概念実証)として開発・提供しました。
現場進捗レビュー環境
デジタルツインを活用したシステムは、建設プロジェクトの進行状況をリアルタイムで可視化することも可能です。
現場の実態を正確にデジタル上に再現し、関係者間での情報共有を円滑にします。
進捗管理や問題の早期発見や、素早く解決策を実施できるようになります。
また、建設機械の自動化シミュレーション環境としても活用されています。
出典:東京都「東京都デジタルツイン3Dビューアによる能登半島地震の被害状況の可視化について」
出典:総務省「情報通信白書令和5年版 デジタルツイン」
シリコンスタジオでは「産業分野におけるデジタルツインソリューション」の提供が可能
シリコンスタジオが提供する「産業分野におけるデジタルツインソリューション」は、各種データをゲームエンジンに取り込むことでデジタルツインによる3D可視化環境を構築することが可能です。
製造業や土木・建築業などの産業分野で活用が進んでいます。
具体的には、3D都市モデルデータ、BIM/CIMなどの設計データ、LiDARをはじめとした各種計測器による点群などの計測データを取り込み、これらのデータを基にした3D可視化を実現することが可能です。
関連ページ:Silicon Studio「産業分野におけるメタバース/デジタルツイン活用」
デジタルツインを活用して業務効率化や生産性向上を実現しよう
デジタルツインを活用するためには、3Dビジュアライゼーション・シミュレーションツールやゲームエンジン、そして各種データとの連携が不可欠です。
そのためには、各種データをゲームエンジンに取り込むことなど、デジタルツインによる3D可視化環境を構築しなくてはなりません。
シリコンスタジオでは、「産業分野」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
デジタルツインによる課題解決を検討したい方は、お気軽にご相談ください。
■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部
自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。
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