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2024.06.28
デジタルツインとは?使われる技術と活用事例を解説
- 目次
- この記事を読むのにかかる時間:8分
近年、デジタルツインは単なるデータ収集の基盤にとどまらず、現場のリアルタイム把握や、現実では困難なシミュレーションの実行環境として注目を集めています。
デジタルツインとは、現実世界の物体やシステム、環境から得た情報をデジタル空間に再現し、解析や可視化を行う技術です。製造業や重工業、建設業に加え、都市計画、防災、モビリティ分野など、社会インフラ全体を対象とした活用が進みつつあります。
本記事では、特に3Dモデルを活用した可視化・シミュレーションを中心に、デジタルツインの基本概念から関連技術、国内を中心とした実際の活用事例まで、わかりやすく解説します。
(2026年1月29日 一部内容を改訂)
デジタルツインとは
デジタルツインとは、センサーやシステムから取得した現実世界に存在する設備・建物・都市・物体の動きや環境などのデータを利用して、デジタル空間上に再現・同期する技術です。
現実の物理空間と仮想空間が「双子(ツイン)」のように連動することからデジタルツインと呼ばれています。
物理的な形状だけでなく、稼働状況や環境条件、動作データなども含めて再現することで、現実世界の理解や解析、予測に役立ちます。3Dモデルによる可視化はその一形態で、直感的に状況を把握しやすくする手段として広く活用されています。
近年はIoTセンサーの普及、クラウド基盤の高度化、AIによる分析技術の進展により、以前は一部の大規模安業に限られていたデジタルツインが幅広い分野で導入されるようになりました。
デジタルツインの概要と変遷
デジタルツインは、もともと航空・宇宙産業や製造業における設備管理、品質管理を目的として発展してきました。近年では都市全体を対象とした「都市デジタルツイン」や防災・減災を目的としたシミュレーション用途へと拡張しています。
世界のデジタルツインの市場は2020年代を通じて年率30%前後で成長すると見込まれており、2025年には数兆円規模に達するという予測が一般的です(2025年12月時点)。
一方で、データ形式の違い、リアルタイム性の確保、運用コストといった課題もあります。クラウドネイティブな設計や標準化技術の進歩とともに課題は徐々に解消され、さらなる発展が期待されるでしょう。

出典:総務省「デジタルツイン/第2部 情報通信分野の現状と課題」
メタバースとの違い
デジタルツインとメタバースは、いずれも3D仮想空間を活用する技術ですが、目的と設計思想は大きく異なります。
デジタルツインは、現実世界の情報を正確に反映・同期させることを前提とし、設備管理や業務効率化、意思決定支援といった実務利用を目的としています。
一方、メタバースは現実世界の再現に必ずしも重きを置きません。ユーザー同士がアバターを用いた交流やエンターテインメント、ショッピングなどの経済活動などを行うための仮想空間そのものを指すケースが多い点が特徴です。
デジタルツインは現実世界を再現して「理解・最適化」する技術、メタバースは仮想空間で「体験・活動」するための場であるといえるでしょう。
デジタルツインが求められる背景と支える主要技術
デジタルツインの考え方は、NASAのアポロ計画にまで遡るとされています。特にアポロ13号の事故対応では地上に存在する実機を用いて状況を再現し、救出対策を検討した事例が象徴的です。
デジタルツインは実機や現場での試行だけでは安全性や信頼性の確保が難しい場面が増えていることを背景として、複雑化する物理世界のシステムを効率的に管理・最適化するために求められています。
また、現実での検証は時間やコストがかかるため、仮想空間でのシミュレーションによる事前検証や予測が必要とされています。さらに、IoTやセンサー、3D計測、クラウド解析、AIなどの技術進化により、現実世界の詳細データを収集・統合し、デジタル空間で活用できる環境が整ってきたことも、デジタルツインの普及を後押ししています。
ここからは、デジタルツインによる3Dシミュレーション環境の構築に不可欠なデータやツール、技術を見ていきましょう。
3Dモデル
デジタルツインの基盤として重要なのが3Dモデルです。
CADやBIM/CIM、3Dスキャン、点群データ、フォトグラメトリなどの情報をもとに、物理空間を直感的に把握できる3D環境を構築できます。
3Dモデリングツールとしては、Autodesk 社の各種3DソフトウェアやBlender、ダッソー・システムズ社の3DEXPERIENCEプラットフォームなどが挙げられます。
さらに都市レベルのデジタルツインでは、国都交通省が主導する「PLATEAU」に代表される3D都市モデルを活用することも可能です。
こうした3Dモデルをベースにシミュレーションや解析を行うことで、現実のシステムやプロセスの理解や改善に役立ちます。
関連コラム「点群データとは?取得方法や活用事例を紹介」
関連コラム「フォトグラメトリとは?3Dモデルを作成できる技術について知ろう」
関連コラム「都市モデル「PLATEAU(プラトー)」とは!?特徴や活用を解説」
3D開発プラットフォーム(ゲームエンジン)
ゲームエンジンは、コンピューターグラフィックスによるアプリケーションやコンテンツ開発において必要なライブラリやツールなどの機能がまとまったGUIベースの統合開発環境です。高品質な3Dグラフィックスを比較的簡単に作成できる仕組みが揃っているため、近年はゲームや映像コンテンツのみならず、産業分野におけるデジタルツインでの活用が進んでいます。
米Unity Technologies社の「Unity(ユニティ)」と、米Epic Games社の「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」が高いシェアを誇っています。また、USDを軸に異なるツール間のデータ連携を可能にするNVIDIA社のOmniverse(オムニバース)、Matterport社が提供するMatterport(マターポート)なども注目の3Dデジタルツインのプラットフォームです。
Microsoft社のAzure(アジュール)などのクラウドサービスと組み合わせることで、大規模かつ柔軟な運用が可能になります。
関連コラム「産業分野での活用が進むゲームエンジンとは?活用メリットや活用例を紹介」
各種データとの連携
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デジタルツインは、IoTデバイスから収集したリアルタイムデータ、3Dスキャンやフォトグラメトリによる空間情報、環境データ(気温・湿度・風速・天候など)、さらにAIやシミュレーションソフト(MATLAB/Simulink、PTV Vissim、SCANeRstudioなど)から得られる計算結果に加え、BIM/CIMやCADなどの設計データも統合して活用します。これにより、建築物やインフラ、工場設備の構造情報と、稼働状況や環境条件を一体としてデジタル空間上で再現・解析できます。
ロボットや自律システムの挙動を検証する場合は、ROS(Robot Operating System)との連携が有効です。ROSを通じて実機で使用する制御ロジックやセンサーデータを取り込み、群制御や複雑な自律挙動のシミュレーションが可能になります。
こうした多様なデータを活用するためには、各種データを柔軟に取り込み、処理・連携できるプラットフォームや安定したサーバー/ネットワーク環境が必要です。プラットフォームとしては、前述のゲームエンジンやNVIDIA Omniverseなどが該当します。
デジタルツインの主なユースケース
デジタルツインは、さまざまな分野において「現実空間をデジタル上で再現し、検証・最適化する」ための基盤として活用されています。
代表的なユースケース(活用用途)は以下のとおりです。
- 走行、運転シミュレーション環境
- ロボット・自律システムのシミュレーション環境
- 人流、群衆シミュレーション環境
- 工場ライン最適化
- 都市開発(東京都、静岡県)
- 災害対策、防災(東京都による能登半島地震、あいおいニッセイ)
- 現場進捗レビュー環境
以下で、それぞれの活用方法について概要を確認します。
走行・運転シミュレーション環境
デジタルツインは、自動車・モビリティ分野における走行・運転シミュレーション環境、自動運転やADASの学習・検証環境として活用されています。
仮想空間上で道路環境や交通状況を再現することで、現実では再現が難しい条件下での検証や評価が可能です。これにより、開発効率の向上や安全性検証の高度化につながります。
シリコンスタジオは、マツダの自動運転技術開発のための環境認識・認知領域における深層学習アルゴリズム検証用教師データ作成を支援すべく、MAZDA CO-PILOT CONCEPT技術開発用合成データ生成・編集ツールを開発・提供しました。

ロボット・自律システムのシミュレーション環境
デジタルツインは、ロボットや自律システムの動作を仮想空間上で検証するシミュレーション環境として活用されています。
ROS(Robot Operating System)と連携することで、実機と同じ制御ロジックを用いた検証が可能です。単体ロボットだけでなく、複数台が連携して動作する群制御や、自律的な判断を伴う挙動の評価にも対応できます。
こうした環境は、実機での試験が難しい条件下での検証や、開発初期段階における試行錯誤の効率化に有効でしょう。
シリコンスタジオでは、竹中工務店に対し、月面環境を再現したデジタルツイン上で、ROSと連携した小型ロボット群の動作や協調行動を検証するシミュレーション環境を提供しています。

人流・群衆シミュレーション環境
都市や施設内における人の動きを再現し、分析する用途でもデジタルツインが活用されています。
人々の行動パターンや滞留、混雑の発生などをシミュレーションすることで、都市計画や施設の動線設計、イベントの運営・管理、防災対策への活用が可能です。
工場ライン最適化
工場の生産ライン全体をデジタルツインとして再現することで、実際に製造する前に工程の無駄やボトルネックを洗い出せます。
設備配置やライン設計、工程変更を仮想空間で検証できるため、コスト削減や生産性の向上が期待できます。
シリコンスタジオはSUBARUに対し、型間搬送上の干渉チェックなどを目的とした3Dデジタルツインによる工場内のプレスライン搬送シミュレーション環境を開発、提供しました。

都市開発
都市スケールでのデジタルツインは、建物や道路、インフラ、人の流れなどを統合的に再現し、まちづくりや都市計画に活用されます。景観検討やインフラ整備、防災計画の策定など、まちづくりの幅広い用途に対応できる点が特徴です。
東京都や静岡県では、都市デジタルツインを活用し、防災や景観検討、インフラ管理を行っています。複数部局で同一データを共有できる点は、大きな利点といえるでしょう。
災害対策・防災シミュレーション
災害発生時の被害想定や避難行動を検討するためのシミュレーション環境としてもデジタルツインは有効です。浸水や土砂災害、建物被害などを可視化することで、事前の備えや迅速な意思決定を支援します。
例として、東京都はデジタルツインを利用して、令和6年の能登半島地震の被害状況を可視化しました。被災自治体職員や関係者は被害状況を視覚的に把握し、復旧・復興活動に効果的に対応できる見通しが立ちます。
また、あいおいニッセイ同和損害保険向けにシリコンスタジオが開発した「3D浸水ハザードマップ」は、自治体の防災計画検討に役立てるためのPoCとして提供されました。

現場進捗レビュー環境
建設やインフラ整備の分野では、ドローンやLiDARで取得した点群データを用い、進捗状況をデジタルツインで確認する事例が増えています。離れた関係者間でリアルタイムに共有することが可能です。現地に足を運ばずとも状況を把握できるため、進捗管理や課題の早期発見や合意形成の迅速化に役立ちます。
また、建設機械の自動化シミュレーション環境としても活用されています。
シリコンスタジオは、西松建設による山岳トンネルデジタルツインプラットフォーム構築を3Dグラフィックス技術で支援しました。3Dグラフィックスで仮想空間にトンネルを再現し、UnityとROSとの連携で現場トンネル内の「環境データ」および⼈・重機の「位置データ」をリアルタイムに取り込んで反映・表示する仕組みを開発しました。

シリコンスタジオでは「産業分野におけるデジタルツインソリューション」の提供が可能
シリコンスタジオが提供する「産業分野におけるデジタルツインソリューション」は、各種データをゲームエンジンに取り込むことでデジタルツインによる3D可視化環境を構築することが可能です。
製造・重工業、自動車・モビリティ、土木・建築、航空・宇宙・防衛など、さまざまな産業分野で活用が進んでいます。
具体的には、3D都市モデルデータ、BIM/CIMなどの設計データ、LiDARをはじめとした各種計測器による点群などの計測データを取り込み、これらのデータを基にした3D可視化を実現することが可能です。
デジタルツインを活用して業務効率化や生産性向上を実現しよう
デジタルツインを活用するためには、3Dビジュアライゼーション・シミュレーションツールやゲームエンジン、そして各種データとの連携が不可欠です。
そのためには、各種データをゲームエンジンに取り込むことなど、デジタルツインによる3D可視化環境を構築しなくてはなりません。
シリコンスタジオでは、「産業分野」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
デジタルツインによる課題解決を検討したい方は、お気軽にご相談ください。
出典:総務省「情報通信白書令和5年版 デジタルツイン」
出典:東京都「東京都デジタルツイン3Dビューアによる能登半島地震の被害状況の可視化について」
■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部
自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。
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