3DCGにおけるレンダリングとは?手法や技術について基礎解説
  • その他

2024.12.25

3DCGにおけるレンダリングとは?手法や技術について基礎解説

3DCGを制作する際、非常に重要な欠かせない技術の1つがレンダリングです。レンダリングには多くの手法やレンダラーが存在します。
近年、技術革新も目覚ましいため、それぞれの特徴やレンダリングのトレンドなども把握しておきたいところです。

本記事では、3DCGにおけるレンダリングについて、使用される技術の特徴やトレンド、今後の展望などをご紹介します。

レンダリングとは

そもそもレンダリングとは、どのような技術なのでしょうか。ここではレンダリングの概要と、3DCGにおけるレンダリングの意味についてご紹介します。

レンダリングの概要

レンダリングとは、データで記述された数値や演算データを、コンピュータが処理して人間がわかりやすい画像や映像、音声などの形に変換するプロセスのことを指します。
レンダリングは、動画編集やサウンド分野、3DCGやアニメーション、映画、ゲームなどのデジタルコンテンツ分野で広く使用されており、視覚的にリアルな表現を実現するための重要な技術です。

3DCGにおけるレンダリングの意味

3DCGにおけるレンダリングは、3Dシーンのデータを2次元の画像や動画に変換して可視化するプロセスです。オブジェクトの座標や形状、テクスチャ、カメラ、光源などの情報を基に、ピクセルの集合である画像へ変換します。

優れたレンダリングと適切な設定により、コンピュータ内で作成された3Dオブジェクトが写真のような映像として見えるようになったり、現実では表現が難しいような効果やライティングを実現できたりします。レンダリングは、視覚的なリアリズムを追求するための重要なステップであり、3DCGを活用したゲームや映画の制作において欠かせない技術です。

3Dレンダリングの代表例「プリレンダリング」と「リアルタイムレンダリング」

3Dレンダリングには「プリレンダリング」と「リアルタイムレンダリング」があります。ここでは、それぞれがどのような技術なのかをご紹介します。

プリレンダリング(オフラインレンダリング)

プリレンダリングとは、3Dシーンを事前にレンダリングしてアニメーションや動画などのCGを準備しておく技術です。3Dモデル、テクスチャ、カメラなどの情報から、1フレームずつ時間をかけてレンダリングして画像を生成しておくため、再生する機器のスペックに左右されず、高品質な画質を実現できます。
プリレンダリングは映画やゲームのムービー、建築物のプレゼンテーション資料など、インタラクティブ性を求められないコンテンツに適している技術です。

リアルタイムレンダリング

リアルタイムレンダリングとは、ユーザー側が操作したり視点を移動したりするたびに、即座に計算処理を高速に行い、3Dシーンを描画する技術です。その場その場での臨機応変なレンダリングを可能とする技術のため、ゲームやVR・ARコンテンツ、広告など、インタラクティブ性の高いコンテンツで広く活用されています。

リアルタイムレンダリングでは、クオリティーとパフォーマンスのトレードオフを考慮しながら、さまざまな工夫を施すことによって高いフレームレートを狙うことが大切です。高速処理を実現するグラフィックスプロセッサ(GPU)を活用することで、大規模で複雑な3Dシーンでもリアルタイムレンダリングの質と速度を劇的に向上させ、ユーザーのビジュアル体験の価値を高めることが可能です。

3Dレンダリングの5つの手法

3Dレンダリングの5つの手法

ここからは3Dレンダリングで使われる手法を5つ紹介します。

  • レイトレーシング
  • スキャンライン
  • Zバッファ法
  • トゥーンレンダリング
  • ラジオシティ

レイトレーシング

レイトレーシングとは、光線を追跡することでリアルな光の反射や屈折をシミュレートする手法です。光源から発せられた光が物体に当たり、反射や屈折を繰り返しながら視点に届くまでの経路を計算することで、リアルな影や反射、透明感を表現できます。特に、映画や高品質なゲームグラフィックスで使用されることが多く、リアルな映像表現が求められる場面で効果を発揮するのが特徴です。

スキャンライン

スキャンラインは、画面を水平線(スキャンライン)に分割し、ラインごとにポリゴンを描画する手法です。各スキャンラインに対して、ポリゴンの交差点を計算し、ピクセルごとに色を決定します。スキャンラインは、CG技術が登場した頃に使用されていた手法で、現在はほとんど使用されておらず、より高度な手法が使用されています。レイトレーシングと比較すると品質も劣ります。

Zバッファ法

Zバッファ法とは、各ピクセルの深度情報を保持し、視点から最も近い手前にあるオブジェクトのみを描画する手法です。描画する際に、各ピクセルの深度値を比較し、手前にあるオブジェクトのみを表示することで、高速化して時間を短縮しながら正しい隠面消去が行えます。3DCGの基本的な技術ですが、奥行きを判定しづらい透明や半透明なモデルには不向きです。

トゥーンレンダリング

トゥーンレンダリングとは、手描きアニメーションや漫画風の作画を模倣するレンダリング手法です。光の影響を考慮しながら陰影を付けるシェーディング処理を行う際、明るさの度合いによって境界線を決定し、一定の範囲内に同じ色の影を作画することによって、平坦で境界線がはっきり強調された陰影を表現できます。特に、アニメーション映画やゲームで使用され、独特のビジュアルスタイルを表現できるのが特徴です。

ラジオシティ

ラジオシティとは、光源から発せられた光が物体に反射し、間接光として他の物体を照らす効果を計算する手法です。光のエネルギーの行方を熱力学的に処理し、複数の物体が光を乱反射させてお互いを照らす効果を再現できるため、柔らかな陰影や間接照明を表現できます。建築ビジュアライゼーションや高品質なレンダリングで使用されるケースが多いです。

代表的な3Dレンダラー

3Dレンダラーは多くの種類が存在します。ここでは代表的な3Dレンダラーを、ゲームエンジンとレンダリングエンジンにわけてご紹介します。

ゲームエンジン

Unreal Engine / Unity

ゲームエンジンとは、ゲームのキャラクターや環境を作成し、物理演算やグラフィックスの処理を行うための機能を提供するツールです。ここでは、代表的なゲームエンジンをご紹介します。
関連ページ「産業分野での活用が進むゲームエンジンとは?活用メリットや活用例を紹介

Unreal Engine

Unreal Engineは、Epic Gamesが開発した強力なゲームエンジンです。物理ベースレンダリングを採用しており、高品質なグラフィックス表現が求められるリアルタイム3Dコンテンツの制作に広く利用されています。最新バージョンのUnreal Engine 5では、高性能レンダリングと自動LOD(Level of Detail)機能を提供する「Nanite」や動的なグローバルイルミネーションシステムの「Lumen」といった革新的な機能が追加され、よりリアルで没入感のあるビジュアル品質を提供できるのが特徴です。

Unity

Unityは、さまざまなプラットフォーム向けに2Dおよび3Dのゲームやインタラクティブなコンテンツを作成するための開発ツールです。ゲーム開発だけでなく、VRやAR、映画、建築など多岐にわたる分野で利用されています。
Unityでは、ビルトインレンダーパイプライン、Universal Render Pipeline (URP)、High Definition Render Pipeline (HDRP)という3つの物理ベースのレンダーパイプラインを採用しており、最新バージョンのUnity 6ではレンダーパイプラインに改良が加えられ、これまで以上に高度なグラフィックスとパフォーマンスの最適化が可能です。

レンダリングエンジン

レンダリングエンジン

レンダリングエンジンとは、3Dモデルやシーンを視覚的に表現するためのツールです。光の反射や影の計算を行い、リアルな画像や映像を生成することが可能です。ここでは、代表的なレンダリングエンジンをいくつかご紹介します。

Arnold

Arnoldは、Autodeskが提供する高性能なレンダリングエンジンで、映画やアニメーションの制作に広く使用されています。CPUとGPUの両方で動作し、リアルなサブサーフェススキャッタリング(SSS、光が半透明な物体の表面を透過し内部で散乱した後に表面から再び出てくる現象)や、ボリュームレンダリング(3次元的な広がりを持つデータを2次元画面に直接表示する技術)などの高度な機能を備えているのが特徴です。

V-Ray

V-Rayは、Chaos Groupが開発したレンダリングエンジンで、フォトリアリスティックなレンダリングを実現することが可能です。3ds Max、Maya、SketchUpなどの主要な3Dソフトウェアと統合されており、建築ビジュアライゼーションや映画制作において高い評価を得ています。

Renderman

Rendermanは、Pixar Animation Studiosが開発したレンダリングエンジンで、映画制作において広く使用されています。物理ベースのシェーディングと高度なライティング機能を提供し、リアルな映像を生成することが可能です。

Maxwell Render

Maxwell Renderは、Next Limit Technologiesが開発したレンダリングエンジンで、物理的に正確な光学シミュレーションを行います。建築ビジュアライゼーションや製品デザインで広く活用されているように、リアルな画像を生成できるのが強みです。

Indigo Renderer

Indigo Rendererは、Glare Technologiesが開発したフォトリアリスティックなレンダリングエンジンで、物理的に正確な光のシミュレーションを行います。GPUとCPUの両方で動作し、高品質な画像とアニメーションを生成することが可能です。

3Dレンダリングの技術トレンド

IT技術の進歩によって、3Dレンダリングの技術もこれまで変化してきました。ここでは、近年における3Dレンダリングの技術トレンドをご紹介します。

リアルタイムレンダリングの進化

近年、リアルタイムレンダリングの技術は、日々進化しています。例えば、その一つがシーン内のすべての光の相互作用をシミュレートするグローバルイルミネーション(GI)技術です。
従来は計算コストが高く、リアルタイムでの実装は困難でしたが、ハードウェアの進化と新しいアルゴリズムの開発により、リアルタイムGIの実現が可能になりました。
リアルタイムGIは、光が物体に反射し、他の物体に間接的に影響を与える様子をリアルに再現できるため、リアルタイムレンダリングにおいてシーンのリアリズムを大幅に向上させます。

また、「3Dレンダリングの5つの手法」の章で紹介した光の反射、屈折、影、反射などをリアルタイムで計算するレイトレーシング技術も、近年のGPUの進化により、ゲームやインタラクティブなアプリケーションでのリアルタイムレイトレーシングが可能となりました。非常にリアルな光と影の効果を実現できます。

AIと機械学習の活用

近年、AIと機械学習を活用することで、レンダリングの最適化や品質向上が図られています。例えばGoogle Cloudのクラウドレンダリング「Immersive Stream for XR」は、レンダリングプロセスをクラウド上のサーバーで行う技術です。ローカルのハードウェアリソースを節約し、より高速で効率的なレンダリングが可能になります。

レンダリング技術の進化と今後の展望

ここからは、レンダリング技術の進化と今後の展望をご紹介します。

レンダリング技術の進化

レンダリング技術の進化は、動画や3DCGコンテンツの制作において重要な役割を果たしています。近年の技術進化により、リアルタイムレンダリングとプリレンダリングの品質差が縮小し、より現実に近い映像表現が可能です。

また3D空間でモデルを扱い、素材を追加することでレンダリングなどを行えるAdobe Dimensionの登場により、ブランドの視覚化やイラスト、製品モックアップなどのクリエイティブ作品を簡単に制作できるようになりました。開発者はよりリアルな3Dコンテンツを効率的に作成できます。

レンダリング技術の今後の展望

近年のレンダリング技術は、機械学習やディープラーニングの進化により、品質、速度、効率性が大幅に向上しつつあります。3Dモデルやテクスチャの自動生成を含むニューラルネットワークを活用した高品質なシーン描画の自動化やレンダリング品質の調整、最適化などの実用化が期待されている状況です。

3DCG制作においてレンダリングは必須の技術

3DCG制作におけるレンダリングは、3Dシーンのデータを人間が視覚的に認識できる状態に変換する重要な技術です。映画やゲームなどのデジタルコンテンツ制作で広く使用されています。事前に高品質な画像を生成する「プリレンダリング」と、リアルタイムで映像を生成する「リアルタイムレンダリング」の2つに大別されます。
また、レンダリングには光の反射や屈折をシミュレートするレイトレーシングや、深度情報を用いるZバッファ法など、さまざまな技術があり、近年はリアルタイムレイトレーシングやAIを活用した最適化も進化しているところです。
一方で、アニメーション作品や映画制作におけるレンダリングは多くの時間がかかるため、PCを占有される点が課題ともいえるでしょう。

シリコンスタジオでは、V-Ray、Arnoldといったプリレンダリングエンジンの有効な代替手法となる、 Unreal Engineによるハイクオリティ分散レンダリングソリューションを提供しています。レンダリングに追われる放送アニメ制作スタジオなど、オンプレとクラウドのシームレスなレンダリングタスク管理の課題に直面している事業者の方は、シリコンスタジオにご相談ください。

関連記事:Silicon Studio「UEによるハイクオリティ分散レンダリング

■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

CTAバナー

SHARE
X
Facebook
はてなブックマーク
LINEで送る
Linkedin

関連記事

コラム一覧へ戻る

ご相談・お問い合わせ

お客様の条件・ご要望に合わせ、
柔軟性を持って対応いたします。
シリコンスタジオにお気軽にお問合せください。

相談する

資料請求

事例集やサービス資料、動画など
お役立ち資料をダウンロードできます。

資料ダウンロードする

電話でのお問い合わせ

03-5488-7481

平日 9:30~17:30 土日祝休

ゲームエンジンを活用した課題解決方法がわかる! 導入事例集10選

ページの先頭に戻る