自動車・モビリティ業界
2024.06.26
ADASとは?ADとの違いや現状と将来性について解説
近年、自動車が車線の中央を維持して走行したり、必要に応じて自動でブレーキをかけたりするなど、ドライバーの安全で快適な運転を支援するADAS(Advanced Driving Assistant Systemの略称)が注目されています。
本記事では、ADASとはどのようなものなのか、その定義やAD(自動運転)との違い、代表的な機能、事例などについてご紹介します。
ADASとは
ADASとは日本語で「先進運転支援システム」という意味で、ドライバーの運転操作を支援する機能や技術の総称を指します。
ADASは、ドライバーの意思を尊重しながら、事故が起きる確率を減らしたり、運転手の運転の負荷を軽減したり、安全運転をサポートするさまざまなシステムを含む点が特徴です。
前方に人や車両を検知すると警告音を鳴らす機能や、車間距離に応じて速度を制御する機能などが該当しますが、人が運転に関与して操作を行うことが必要となります。
センシングシステム技術の発達などを背景に、多くの車両にさまざまなADASが搭載されるようになりました。
ADAS(先進運転支援システム)とAD(自動運転)の違いとは
ADとは「Autonomous Driving」の略称で、日本語では「自動運転」という意味です。
自動車の判断のみで、目的地までたどり着くことを目的としています。
ADASとは異なり、人が運転に関与せずに自動車が運転を行う点が特徴です。
自動運転の程度は、SAE(アメリカ自動車技術会)によって、運転に対するドライバーとシステムの責任レベルで定義されています。
自動運転にはレベル1からレベル5までの段階があり、ADASは通常レベル2「部分的運転自動化」に該当し、レベル3以上が自動運転と呼ばれることが一般的です。
日本では、以下の内容で分類が解説されています。
- レベル1~2:運転支援。自動ブレーキや車間距離制御装置、車線逸脱防止支援システムなどの運転支援システムを搭載
- レベル3:条件付き運転自動化。システムがすべての運転タスクを実施し、状況に応じてドライバーが介入
- レベル4:高度運転自動化。特定の状況下でシステムがすべての運転操作を実施
- レベル5:完全運転自動化。常にシステムがすべての運転タスクを実施
【関連記事:自動運転(AD)の実現に向けた技術的課題と対策。おさえるべきポイント】
ADASが重要な理由
ADASが求められるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか。
ここでは、ADASがなぜ重要なのか、そしてどのように機能を設計するべきかについてご紹介します。
ADASが重要な理由
近年、ADASが重視されるようになった理由は、以下のとおりです。
- ヒューマンエラーの最小化
- 交通環境の安全性向上
ヒューマンエラーの最小化
ADASの目的の1つは、ドライバーのヒューマンエラーを最小化することです。
人間は疲労や注意散漫などで運転ミスを犯すことがありますが、ADASはセンサーやカメラを使用して周囲の状況を監視し、警告や自動制御を行うことで事故を抑制できます。
交通環境の安全性向上
ADASは衝突回避や車線維持、自動ブレーキ、駐車支援などの機能を提供している点が特徴です。
そのため、交通環境がより安全になり、人々の生命と財産を守る役割を果たしています。
ADASの具体的な機能
ADASにはさまざまな機能が求められます。
以下で、具体的な機能を確認しておきましょう。
アダプティブクルーズコントロール(ACC)
アダプティブクルーズコントロールは、前方を走る車両を検知し、一定の車間距離を保ちながら追従走行を行う機能です。
ドライバーがアクセルやブレーキを操作しなくても、自動的に速度調整を行います。
自動緊急ブレーキ(AEB)
自動緊急ブレーキは、直接交通事故につながる危険性を判断し、必要に応じて自動的にブレーキを作動させる機能です。
歩行者や障害物との衝突を回避するために欠かせません。
レーンキープアシスト(LKA/LKAS/LKS/LKAS)
レーンキープアシストは、前方のカメラによって道路上の白線を検知し、車線維持をサポートする機能です。
車両が車線からはみ出すことを防ぎ、安全な走行を支援します。
ブラインドスポットモニター(BSM)
ブラインドスポットモニターは、後方から走行してくる他の車両を検知する機能です。
死角である後方から接近する車両をドライバーに通知し、安全な車線変更をサポートします。
道路標識認識(TSR)
道路標識認識は、前方のカメラで撮影した画像から道路標識を認識し、ドライバーに表示する機能です。
制限速度や一時停止標識などを正確に識別します。
アダプティブフロントライティング(AFS)
アダプティブフロントライティングは、ハンドル操作や速度に合わせて車両の進行方向に合わせてヘッドライトの向きを調整する機能です。
夜間や曲がり角での視界を向上させます。
ドライバー異常時対応システム(DEA)
DEAは、ドライバーの運転支援機能の一環として、ドライバーの状態をモニタリングし、運転が継続できないと判断された場合には自動的に車両を停止させる機能です。高速道路や一般道を問わず、事故の回避と被害軽減をサポートします。
ADASの技術要素
ADASは複数の技術要素によって構成される点が特徴です。
以下では、ADASにおける主な技術要素をご紹介します。
車載用センサー
車載用センサーは、車両の周囲環境を認識するために使用されます。
主なセンサーの種類は以下のとおりです。
- カメラ:画像データを取得し、道路標識や歩行者の検出、車線認識などに利用される
- レーダー:距離データを計測し、車間距離制御や前方衝突警報などに活用される
- LiDAR:レーザー光を用いて遠距離の対象物までの距離を測定し、道路形状の認識や障害物検出に使用される
- GPS:車両の位置情報を提供する
- オドメーター:車両の走行距離を計測する
- IMU(Inertial Measurement Unit):速度、加速度、姿勢データを取得する
車載ECU
車載ECU(Electronic Control Unit)は、自動車の電子制御技術に伴い搭載されている技術です。
ADASにおいては、センサーデータを収集・処理し、運転支援機能を制御します。
車両インターフェース
車両インターフェースは、運転者と車両の間の情報伝達を担う技術です。
例えばダッシュボードの表示や音声案内、ボタン、タッチスクリーンなどが含まれます。
各社の取り組み
国内の各自動車メーカーも、ADASに取り組んでいる状況です。
ここでは、SUBARU(スバル)、トヨタ、本田技研工業(ホンダ)、マツダにおけるADASの取り組みをご紹介します。
SUBARU(アイサイト)
SUBARUは、先進運転支援システム「アイサイト」でADAS市場を大きく開拓しました。
アイサイトはステレオカメラを使用した安全技術で、以下の機能を備える点が特徴です。
- プリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ):前方の障害物を検出し、衝突を回避または軽減するために自動的にブレーキをかける機能
- 全車速追従機能付クルーズコントロール:前車との車間距離を維持しながら自動的に速度を調整する機能
- アクティブレーンキープ:車線を逸脱する際にステアリングを補正する機能
SUBARUは、2024年までに高速道路などでレベル2以上の自動運転機能を実装することを目指しています。
トヨタ
トヨタのADAS戦略は、トヨタセーフティセンス(Toyota Safety Sense)というブランドで展開されています。
トヨタセーフティセンスには、以下の機能が含まれる点が特徴です。
- プリクラッシュブレーキ(Pre-Collision System):前方の障害物を検出し、衝突を回避または軽減するために自動的にブレーキをかける機能
- レーンディパーチャーアラート(Lane Departure Alert):車線を逸脱する際にドライバーに警告を出す機能
- ダイナミックレーダークルーズコントロール(Dynamic Radar Cruise Control):前車との車間距離を維持しながら自動的に速度を調整する機能
また、トヨタは自動運転技術の開発にも積極的に取り組んでおり、レベル2以上の自動運転機能を実装しています。
本田技研工業(ホンダ)
ホンダもADAS技術の開発に取り組んでおり、Honda SENSING(ホンダ センシング)というブランドで展開しています。
Honda SENSINGには、プリクラッシュブレーキ、レーンディパーチャーアラート、ダイナミックレーダークルーズコントロールなどの機能が含まれる点が特徴です。
ホンダは自動運転技術の研究も進めており、将来的にはさらなる自動運転機能の実装を予定しています。
マツダ
マツダは「危険な状況に陥ってから対処するのではなく、危険自体を回避する」という安全思想に基づき、「i-ACTIVSENSE(アイアクティブセンス)」という先進安全技術群を開発、展開させています。
代表的な機能は以下のとおりです。
- AT誤発進抑制制御:ペダルの踏み間違いによる急発進を抑制
- 交通標識認識システム(TSR):交通標識の見落としを防ぐ
- ドライバー/モニタリング:ドライバーの疲労や眠気を検知し、休憩を促す
マツダでは、国が推奨する新しい自動車安全コンセプト「サポカーS」の「ワイド」に該当するための技術のほか、先進安全技術をコンパクトカーからハイエンドモデルまでの全グレードに標準装備しています。
シリコンスタジオではADAS開発に活用可能な「3D都市空間」の提供が可能
シリコンスタジオが提供する「リアルタイム3D都市空間ビジュアライゼーション」は、AD/ADAS開発に必要な学習データとなる走行シーンや検証・シミュレーションに活用できる仮想空間を構築することが可能です。
CAD、BIM/CIM、点群などの設計・計測データや国土交通省の都市モデルデータベース「PLATEAU(プラトー)」のほか、国内の道路標識や車両、人物などを含む当社独自の市街地アセットモデルを活用することで、現実に近いイメージの高品質な道路や建造物を含む街並みや景観など、市販のシミュレータでは解決できない課題にも柔軟に対応できます。
関連ページ:Silicon Studio「リアルタイム3D都市空間ビジュアライゼーション」
ADASの搭載は今後さらに広がる見込み
ADASはドライバーの運転を支援する機能であり、安全な運転を実現するためにシステムがサポートする技術です。
一方、AD(自動運転)は、基本的にシステムが運転操作を担うことを目指しています。
つまり、ADASは補助的な役割を果たすのに対し、ADは人間の操作を必要としない点が違いです。
ADASは、2020年代に入り本格化し、レベル3以上の自動運転市場も形成されはじめています。
今後、国内外において、ADASと自動運転車は引き続き成長を遂げていくことでしょう。
シリコンスタジオでは、「自動車/モビリティ業界」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
自動車業界/モビリティ業界の課題に直面している事業者の方は、お気軽にご相談ください。
■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部
自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。
DXコラムは、デジタルツインやメタバース、AIをはじめ産業界においてトレンドとなっているDX関連を中心としたさまざまなテーマを取り上げることにより、デジタル技術で業務の効率化を図ろうとする方々にとって役立つ学びや気付き、ノウハウなどを提供するキュレーション(情報まとめ)サイトです。