建設DXと2024年問題。その課題と解決策を探る

建築・土木業界

2024.06.14

建設DXと2024年問題。その課題と解決策を探る

建設業界の2024年問題の解決策の1つがDXです。
しかし、実現するためには、いくつかの課題を解決しなくてはなりません。
なかでも、BIM/CIMデータの活用が重要になるでしょう。

本記事では、建設DXにおける課題や解決策を紹介していきます。

建設DXとは

建設DXとは、建築業全体をデジタル技術で変革し、競争優位性を築くことです。
AIやICTなど先進技術を組み合わせ、建設プロセスの最適化や業務自動化を進めます。
目標は競争力の持続的確立で、多くの企業が課題解決に取り組んでいる状況です。

以下では、建設DXに包括されるi-Constructionと、DXが注目される背景をご紹介します。

i-Constructionとは

i-Constructionは国土交通省が進める「20の生産性革命プロジェクト」のひとつであり、建設現場の全ての段階でICT技術を活用する取り組みです。
2025年までに建設現場の生産性を2割向上することを目指しています。

i-Construction 2.0では、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍向上することを目指し、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱として、建設現場で働く一人ひとりが生み出す価値を向上し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指して、建設現場のオートメーション化に取り組みます。
-引用-
「i-Construction 2.0」を策定しました
~建設現場のオートメーション化による生産性向上(省人化)~
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html

求められる背景

i-Constructionを含む建設DXが求められる背景には、以下のような要素が挙げられます。

労働力不足と高齢化
建設業界では、就業者数の低下と高齢化が深刻化しています。
他の業界よりも人手が集まりにくい状況は続いており、特に若年層の就業者数は年々少なくなっている状況にありながら、60歳以上の就業者は10年後までに大半が引退する見込みです。
若い世代への技術や知識の継承も課題となっています。

生産性の低さ
建設業界では、建設業界は現場によって施工内容が異なり、図面や報告書はまだ紙が主流です。
報告書の作成に時間がかかったり、変更があるとすべての文書を修正する手間がかかってしまったりするなど、効率的な時間活用が難しい状況があります。

また、人手不足の常態化によって適材適所に人手が割り当てることができないことも、生産性の低さにつながっているといえます。

働き方改革への対応
建設業界では、働き方改革への対応も課題となっています。

日本建設産業職員労働組合協議会の「2023時短アンケート」によると、2023年の建設業界の所定外労働時間は平均が36.1時間で、外勤建築は52.1時間、外勤土木は46.6時間と、年々改善されつつも「月45時間以上の残業は年6回まで」の要件である45時間には届いていない状況です。
2024年4月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が適用されたことで生じる問題の総称である「建設業の2024年問題」の解決は大きな課題となっています。

出典:国土交通省「i-Construction、インフラ分野のDXの推進について
出典:国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状

建設業界が抱える課題と試み

近年、建設業界にはさまざまな課題があり、建設DXを推進することによって解決しなくてはなりません。
ここでは、建設業界が抱える主な課題を解説します。

人手不足

建設業界は、高齢化社会と若者の建設業への関心の低下により、労働力不足に直面している状況です。
そのため、プロジェクトの遅延やコスト増加のリスクが生じる可能性があります。
そこで、人手不足を解消するためのデジタル技術として注目されているのが「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)」です。

遠隔臨場

遠隔臨場

遠隔臨場とは、現場に物理的に存在することなく、遠隔地から建設現場を監視・管理する技術です。
これにより、専門家が複数のプロジェクトを同時に監視することや、遠隔地からの問題解決が可能になりますが、通信環境の整備やセキュリティ対策など、導入における課題もあります。

施工の自動化

建設業界では、人手不足の解消や作業効率の向上を目指して、施工の自動化が進められている状況です。
例えばドローンを用いた測量や、AIを活用した設計、ロボットによる施工などがあります。
しかし、自動化技術の開発と導入には高額なコストがかかることや、技術の進歩に伴う法規制の整備も必要です。

建設DXで活用されている技術

建築DXを実現するためには、さまざまな技術を活用することが必要です。
ここでは、建設DXで活用されている主な技術をご紹介します。

点群

点群は、物体や地形を3Dレーザースキャナーなどで計測することにより得られる、 X、Y、Zの基本的な位置情報や色などの情報を持った点データの集合です。
無数の点により表面の形状情報を把握することができます。
点群データは高精度で、構造物の保守点検や老朽化診断などに利用されており、GISではデータの軽量化や加工ができます

点群データはあくまでも点の集合体のため、ビューワーやBIM・CIMソフトに取り込んで確認またはガイドとして使用する以外の用途では、3Dモデル化(面データへの変換)が必要です。

BIM/CIM

BIM(Building Information Modeling)は、建築プロジェクトにおける情報管理とモデリングの手法です。
3次元モデルをベースに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物の統合データとなっていて、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うことができる、現在主流になりつつあるワークフローとなっています。

CIM(Construction Information Modeling)は、以前から建築分野で使用していたBIMを基に、国土交通省が2012年に提唱したものです。
国土交通省の定めにより、2018年5月からBIM/CIMの名称になりました。

クラウド(サーバー/ネットワーク)

クラウド技術を活用すれば、インターネット上の仮想サーバーを介したアプリケーションを提供できるようになります。
インターネットにさえ接続できれば、いつでも、どこでもアプリケーションが利用できる環境を整えることが可能です。

また、クラウド上にデータを保存すれば、効率的な情報共有のための環境が整えられます。
本社や支社、営業所などの遠隔地からでもアクセスできるようになるため、多人数、多拠点による建設現場のリアルタイム確認および指示が可能な環境を用意することが可能です。

AI

AI(人工知能)は、人間の知能をコンピューターで人工的に再現しようとする取り組みや技術全般を指します。
中でも機械学習は、特定業務などに関するデータを解析し、その結果を学習して予測や判断を行う技術です。

例えば、カメラで撮影された画像に映る物体を認識したり、状況を正確に判定したり、異常を検知したりといったことをAIに任せることができます。
また、熟練した職人の技術や作業内容をAIに学習させることも可能です。
これらを応用することで、建設現場の工事の進捗状況を判定し、作業の自動化も実現できるため、AIは建設DXにおいて必須の技術といえるでしょう。

ICT

ICT(Information and Communication Technology)は、一般的にいわれている「IT化」の中でも情報や通信に関連する科学技術の総称であり、電気や電子、磁気、電磁波などの物理現象や法則を活用した機械や器具を使って情報を保存、処理、伝送する技術です。
遠隔操作で飛行させることができる無人航空機のドローンに搭載された高解像度のカメラや、LiDARセンサー、3DレーザースキャナーGPSやGIS技術が組み込まれた建設機械などの活用は進みつつあり、これらによって、建設現場での情報共有や効率化が実現され、労働時間とコストの削減に大きく貢献しています。

BIM活用のユースケース

建設DXを推進して、生産性向上に大きく寄与すると期待されているのがBIM活用です。
ここでは、BIMを活用した現場の進捗管理と効率化に役立つユースケースを見ていきましょう。

村本建設株式会社では、BIMデータと点群データの重畳表示による進捗管理ワークフローを構築しました。
ゲームエンジン(Unity)を活用し、PCだけでなくスマホやタブレットなどのモバイルデバイスやVRによる多人数・多拠点での設計・点群データレビュー環境を実現しています。

その結果、現場に出向かずに、遠隔の複数の場所から設計データと施工状況を視覚的に比較し、確認できるようになりました。
これにより、情報共有と進捗確認の精度が向上し、効率化が実現されています。

シリコンスタジオでは「点群データ/BIM・CIMデータの活用支援」が可能

シリコンスタジオは、建築・土木業界のデジタル変革を支援します。
「点群データ/BIM・CIMデータの活用支援」を通じて、現場の作業効率を向上させ、設計から施工、運用・維持に至るまでのプロセスを最適化できるのが特徴です。

点群データは、レーザースキャンなどで取得した3D空間データを活用し、現状把握や設計作業を効率化します。
一方、BIM・CIMは、建築情報モデリングと建設情報モデリングを指し、3Dモデル上で情報を共有・管理することで、設計変更の影響を即座に把握したり、施工計画を立てやすくしたりすることが可能です。

シリコンスタジオの技術力と経験を活かし、お客様のビジネスをデジタル化の道へと導きます。

関連ページ:Silicon Studio「点群データ/BIM・CIMデータ活用支援

建設業界の課題を解決するDXとして「BIM」に着目しよう

建設業界が抱える課題は、以下のとおりです。

  • 人手不足
  • 遠隔臨場
  • 施工の自動化

これら建設業の課題を解決する有効な手段の1つがBIMです。
BIMを活用し、ぜひ建設DXを実現してください。

シリコンスタジオでは、「建築・土木業界」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
建築・土木業界の課題に直面している事業者の方は、お気軽にご相談ください。

■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

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