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観光DXの未来を切り拓く3D都市モデルを活用したデジタルツイン
  • 観光・文化・芸術

2025.09.26

観光DXの未来を切り拓く3D都市モデルを活用したデジタルツイン

観光業界では、IoT機器からの測定データや3D都市モデルを活用したデジタルツインなど、最先端のデジタル技術によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が加速中です。
都市や観光地をデジタル技術の活用によって仮想空間に再現することで、現地での体験を進化させたり、混雑予測やバーチャル観光を実現したりするなど、観光サービスの在り方が大きく変化しています。

本記事では、国内外の多様な導入事例や最新技術動向を紹介し、デジタルツインによる次世代観光の可能性と今後の展望を解説します。

産業分野におけるメタバース/デジタルツイン活用

このコラムでご紹介しているソリューション

産業分野におけるメタバース/デジタルツイン活用

観光DXの背景とデジタルツイン技術の潮流

近年、少子高齢化や人手不足、訪日外国人の増加、そして新型コロナウイルス感染症の影響など、観光産業を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした課題に対応するために、観光分野ではデジタル技術の活用が求められています。中でも、現実の都市や観光地を仮想空間に再現し、データに基づく効率的な運営や新たな価値創出を実現する「デジタルツイン」技術が注目されています。

ここでは観光DXの背景、デジタルツインの概念、技術基盤、都市における役割などをご紹介します。

観光分野でのDXとは

観光分野でのDXは、単なるアナログからデジタルへの変換による業務の効率化にとどまらず、デジタル技術によって得られるデータを活用し、ビジネス戦略やサービス自体を根本的に変革する取り組みです。

例えば、旅行者の行動データに応じた情報のレコメンドによるスマート観光ガイド、過去のデータや天候からの分析による混雑予測と入場/チケット発券コントロール、AR/VRを使った新しい観光体験などが挙げられます。旅行者の利便性と周遊の促進、観光産業における経営の高度化・効率化、新しい収益源の創出が主な目的です。

デジタルツインの概念と構成要素

デジタルツインとは、現実空間の物理情報をIoTなどの技術を通じてデジタルデータとして取得し、それを仮想空間に再現する技術です。構成要素としては、現実世界のデータを収集するセンサーやIoT機器、集めた膨大なデータを解析・予測するAI、そしてそれらを統合・管理するクラウドやプラットフォームなどが挙げられます。
IoT機器の役割は、現実空間からの正確なデータ収集、およびそのデータからのAIによる現象予測や状況分析です。これら全体がデジタルツイン技術を支えています。

デジタルツインについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
シリコンスタジオ「デジタルツインとは?使われる技術と活用事例を解説
シリコンスタジオ「DXを実現させる3Dデジタルツイン。導入までのステップを知っておこう

都市・建築の3Dモデルの役割

建築物などの3Dモデルは、現実世界の都市空間をデジタル上で再現するための根幹です。観光DXにおいては、デジタルツインを支える基盤技術とも考えられており、最新の3D計測技術で都市や観光地をモデリングしたり、PLATEAUのような3D都市モデルを活用したりすることで、現地の景観を可視化できます。

観光分野では、バーチャル観光や混雑緩和を目的とした仮想空間での事前シミュレーション、災害対策としてのバーチャル訓練、観光資源のデジタルアーカイブや継承などで活用されています。3Dモデルによる情報の共有は、事業者間や利用者への情報伝達も容易にし、新しい観光サービスの創出にも寄与しています。

3Dグラフィックスによるデジタルツインの観光事例

観光分野での3Dグラフィックスによるデジタルツインは、実際どのように活用されているのでしょうか。ここでは、日本国内および海外で注目の3Dグラフィックスによるデジタルツインの事例をご紹介します。

シンガポール「Virtual Singapore」


「Virtual Singapore」は、都市全体を精密な3Dモデルで再現した、観光業のおけるデジタルツイン活用の先駆けと言えるナショナルプロジェクトです。ダッソー・システムズの構築サポートにより、シンガポール政府主導で2014年にスタートしました。
バーチャル空間で建物やインフラ、土地利用、交通流など都市機能をデータ連携し、都市計画や交通・環境・災害シミュレーション、観光プロモーションなど、さまざまな用途で活用されています。
観光分野では、3D都市データを使った観光地のバーチャル体験やルート提案が可能となり、訪問前の下見や混雑緩和、アクセシビリティ情報の提供など、新たなデジタル観光サービス創出に役立てられています。

イタリア・ヴェネツィアの観光流最適化

イタリア・ヴェネツィア

観光産業が重量な収入源であるヴェネツィアでは、オーバーツーリズムを背景に、3Dデジタルツイン技術を活用した「スマートコントロールルーム」が観光管理に導入されました。都市全体の3DモデルにIoTセンサーやカメラなどから得られるリアルタイムデータを統合し、観光客の流れや水位、交通の混雑状況、環境負荷をモニタリングしています。
観光資源の保護と観光客体験の両立を目指した混雑緩和策・観光管理が実現しているのが特長です。デジタルツインによって都市管理の高度化や、観光客・地域住民・環境の三者にとって利益のある持続可能な観光が推進されています。

京都市の清水寺・伏見稲荷の3Dスキャンによるオンライン観光

京都市ではANA NEO株式会社と協力し、2023年から「ANA GranWhale」バーチャル旅行プラットフォームのサービスを展開していました。コロナ禍を機に清水寺や伏見稲荷などの主要観光スポットを3Dスキャンし、オンラインで仮想観光、バーチャル参拝が体験できるサービスです。視覚障害者向けにも触覚VRや音声ガイドと連携し、ユニバーサルツーリズム拡大にもつながっていました。
一時は月間利用者12万人を突破し、コロナ禍での観光需要の回復に貢献していましたが、有料課金の伸び悩みや収益化の限界によって事業の黒字化には至らなかったため、残念ながらサービスは2025年2月に終了しています。

東京都「デジタルツイン実現プロジェクト」によるバーチャル東京

東京都では「デジタルツイン実現プロジェクト」が推進され、都市全域の建物や交通・人の流れ・観光スポットなどを高精度な3Dデータで統合されています。
都市運営の最適化やバーチャルイベント、XR観光案内、都市魅力の海外発信など幅広い観光活用が行われており、利用者のデジタル体験には、没入感ある都心のバーチャル散策や観光情報取得、混雑予測機能も組み込まれているのが特長です。
東京都のデジタルツイン実現プロジェクトでは、このあとの章で紹介する3D都市プロジェクト「PLATEAU」から提供される都市の3Dデータや地理情報を活用しています。

3D都市モデルとデジタルツインの観光活用

3D都市モデルとデジタルツインは、観光体験の革新や地域プロモーション、都市運営の最適化など多岐にわたる先進的な活用が進んでいます。観光地のバーチャル化やリアルタイムデータ連携によるサービス拡張が、国内外で注目されている状況です。
ここでは、高精度な3D都市モデル生成技術を解説し、その応用例をご紹介します。

「PLATEAU」による全国3D都市モデル整備とその可能性

国土交通省が主導するプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」では、日本全国の都市を対象に高精度な3D都市モデルをオープンデータとして整備し、防災・まちづくりへの活用のみならず、映像制作やゲーム、VR・ARなどの多様なコンシューマサービスへの展開も視野に入れています。

最新の実証実験では、衛星写真や既存の3D都市モデルを組み合わせた機械学習による自動生成AIを開発し、建物のテクスチャや都市設備をリアルに再現した高精度デジタルツインデータの自動生成を実現しました。生成データはUnreal Engine 5のプロジェクトとして公開され、配布後はサービス利用者や制作者から多数のダウンロード・高評価を獲得し、今後も利便性や表現の精度向上、新エリアへの展開が期待されています。

PLATEAUについての詳細は、以下の記事をご参照ください。
シリコンスタジオ「都市モデル「PLATEAU(プラトー)」とは!?特徴や活用を解説

西新宿エリアでの高精度デジタルツイン自動生成AIとユーザー反応

西新宿エリアを対象に、3D都市モデルや衛星画像を用いた機械学習プロセスによる、プロシージャルモデリングと画像認識AIで建物や都市設備を高精度で自動生成するシステムが開発・実証されました。Unreal Engine 5のプロジェクトファイルとして公開され、公開1カ月でクリエイター向けに約3,500人、利用者向けには約61,000人に利用されるなど、多くの反響や高評価を獲得しています。

ユーザーアンケートでは「都市景観の再現度」や「用途の多様性」「データ階層のシンプルさ」などが好評価だったようです。今後の課題としては、データの軽量化や分割配布、アルゴリズム精度のさらなる向上が挙げられています。

都市の屋内外を統合するXRコンテンツ開発環境(虎ノ門ヒルズなど)

東京都港区の虎ノ門エリアでは、PLATEAUの3D都市モデルと森ビルによるBIMモデルを統合することで、大規模かつ屋内外を精緻にカバーする都市デジタルツインデータが実証実験として整備されました。さらにこれを活用した「XRコンテンツ開発プラットフォーム」が一般クリエイター向けに提供されました。

この環境ではUnity向けSDKや屋内外の自己位置推定技術(VPS・気圧センサー)などが用意され、ユーザビリティと有用性の検証を目的としたハッカソンイベントを通じて多様なXRコンテンツが開発・実装されています。開発者からは、詳細な3Dモデルや位置情報精度の高さ、開発効率の向上などが高く評価されており、エリア拡大やVPS精度向上へのニーズも顕著です。

3DグラフィックスとVR/ARによる観光体験の高度化

3DグラフィックスとVR/AR

3DグラフィックスやVR/ARの進化が、観光地をめぐる体験の在り方を一変させつつあります。バーチャル技術による臨場感の向上や人流データの活用による混雑緩和、さらには個人に合わせた観光提案が実現しました。
ここでは、観光体験を高める3Dグラフィックス、バーチャル観光・混雑対策などをご紹介します。

VR/ARと組み合わせたバーチャル観光とその臨場感

近年、VRやAR技術が観光分野で幅広く実用化されています。各地の自治体や企業は3D都市モデルとVR/ARを連携させることで、新たなバーチャル観光体験を提供しはじめている状況です。

例えば、志摩スペイン村やバーチャルOKINAWA、バーチャル大阪のように、実際の観光地の街並みやイベントを仮想空間上に再現し、自宅からでもその場にいるような体験ができるようになっています。国土交通省が実施した横浜みなとみらい地区のVRバスツアーでは、最新の3D都市モデルを使用し、高度なスケジューリングや表示制御の技術によって臨場感を高めているのが特長です。
これらの取り組みにより、文化資産の保存や観光体験の機会拡大にもつながっています。

パーソナライズされた観光ルート提案と施設案内の高度化

VR体験やリアルタイムデータの活用によって、観光客の現在地や興味に応じたルート案内や施設情報の高度化が進んでいます。バーチャルショッピングやARガイド機能を活用することで、現地へ足を運ばずに観光地の雰囲気や店舗情報、商品詳細などを個別最適化された形で体験できるのが特長です。

例えば、ホテルチェーンのマリオットはメタバースでのバーチャルホテル見学を進め、ANAやHISは旅の事前体験としてVRツアーを提供しています。Google Earth VRでは360度の世界観光が可能です。
コロナ禍の需要に応じて急速に立ち上げられたバーチャル観光や体験サービスの中には継続的な収益化が難しく、サービスが終了した事例もありました。
一方で、観光業者がVRを使ってプロモーションや事前体験を提供するケースは増えており、企業としては新たな付加価値を提供する手段として多様なパーソナライズド観光案内や仮想体験は今後も広がると予測されます。

AI×デジタルツインによるスマート観光DXの将来像

近年、スマート観光DXの分野では、AIとデジタルツインを活用して旅行体験の個別最適化や都市観光の効率化を実現する事例が急増中です。例えば、自然言語で要望を伝えるだけで最適な旅程を自動生成したり、都市活動の再現と将来予測に基づき混雑緩和や経済効果をシミュレーションしたりする技術が台頭しています。
ここでは、AIとデジタルツインがもたらす観光DXの将来像を解説します。

TravelAgent

TravelAgentは大規模言語モデル(LLM)を活用した旅行計画支援システムです。合理的、包括的、そしてパーソナライズされた旅行プランを動的な条件下で自動生成することを目指しています。
TravelAgentは「ツール利用」「推薦」「プランニング」「メモリ」4つのモジュールにより構成され、ユーザーごとに異なる要望や制約を反映した旅程を組み立てることが可能です。人間の評価とシミュレーションによるテストにおいて、個別最適化や十分な情報網羅性の面で高い有効性が示されています。

ITINERA

ITINERAは、空間最適化とLLMを統合し、自然言語からユーザーの要望に適した都市観光ルートを生成できる都市旅程自動作成システムです。利用者の細やかな希望を理解し、要素分解したうえで観光地の候補を選び、空間的な最適化アルゴリズムを用いて効率的、かつパーソナライズされた都市散策プランを作成します。
実際の利用データによる検証でも、従来手法よりも個別性と空間的調和に優れたルート提案が可能であることを示しました。

NTTデータ「行動予測デジタルツイン」

NTTデータは独自のロケーションビッグデータ解析とAIシミュレーション技術を組み合わせ、地域における人々や観光客の移動傾向をデジタルツイン上で再現・予測する取り組みを進めています。
行動予測デジタルツインは、イベントやプロモーションにともなう経済効果予測、渋滞や混雑の発生予測、混雑緩和のための施策シミュレーションなどに活用されています。自治体や観光業、小売業などが都市開発や観光計画に役立てられ、将来的に全国の都市にも展開を進める計画です。

観光DX推進の課題とデジタルツインの今後の展望

デジタル技術の進展により、観光DXやデジタルツインの導入が全国で加速していますが、その一方で3Dデータの重さや更新体制、地域社会との連携など、さまざまな技術的・社会的課題の解決が課題です。
ここでは、データ処理や表示技術の最適化、自動化されたデータ更新体制の構築、そして地域文化や住民の声を活かした持続可能な観光DX推進への展望について解説します。

モデル精度・容量・表示性能の課題と改善方向性

観光DXやデジタルツインの推進においては、3Dモデルの精度や容量の肥大化、端末ごとの表示性能の違いが課題です。高精度な3D都市モデルや観光資源を再現するためには大容量データが欠かせません。しかし、そのままでは動作の遅延や通信負荷の増大、ユーザー体験の低下を招いてしまいます。
対応策としては、データの最適化・軽量化、クラウドやエッジコンピューティングの活用、動的なモデル読み込みなどによって快適な表示を確保する取り組みが有効です。また、利用端末の多様化に合わせて表示品質を調整する技術開発も求められています。

データ更新と拡張の自動化(CityGML対応など)

都市3D

デジタルツインや観光DX活用の現場では、都市開発や観光スポットの変化に迅速に対応するため、データ更新と拡張の自動化が重視されています。特に、国際標準であるCityGML形式への対応が進められており、これによりビル、道路、植生など都市構成要素の多様なデータを、レベルに応じて柔軟、かつ効率的に管理することが可能です。
さらに、プログラムによるデータ取得や自動更新機能を備えたシステムを導入することで、現地の変化や新規エリア追加にも即時に追随できる体制づくりが進められています。

地域文化との調和・住民参画の重要性

観光DXやデジタルツインの推進では、地域文化や住民の想いを反映する視点が不可欠です。成功事例では、自治体やDMO、地域住民が企画段階から関わることで、リアルな観光資源や伝統文化を忠実にデジタル空間へ再現できています。
地域の声を反映して観光プログラムを組み立てる仕組みや、住民が案内役を務めるイベントを開催するなど、地域社会が主体的に参画できる機会を設けることが持続的発展の要です。住民参加型の観光振興が観光客との良好な関係づくりや、地域経済の好循環に大きく貢献します。

観光業の未来を支えるのはデジタルツイン

デジタルツインや3D都市モデルの革新が、観光DXの未来を大きく切り拓いています。現実空間を精密に再現し、多様なデータを活用することで、従来になかった観光体験やサービス、運営の最適化が進み、地域ごとの個性や文化もより深くデジタルに反映できるようになりました。
また、AIや最新のクラウド技術によるパーソナライズド体験や効率化も進展しており、持続可能な観光振興の実現に貢献しています。DX推進やデジタルツインの導入は、観光地や地域の魅力を最大限に引き出し、持続可能な成長や新たなビジネス機会の創出につながります。

シリコンスタジオでは、3D都市モデル「PLATEAU」や点群、BIM、フォトグラメトリといった技術の活用により、3D都市空間や観光地のデジタルツイン、メタバース構築のニーズに対応可能です。観光DXの推進、バーチャル観光プラットフォームの構築・導入をご検討の際は、ぜひシリコンスタジオにご相談ください。最新技術や豊富な導入実績をもとに、戦略立案から実装、運用まで一貫してサポートいたします。

出典:観光庁「観光DX((デジタルトランスフォーメーション))の推進
出典:観光庁「観光立国推進基本計画/持続可能な観光地域づくり戦略
出典:国土交通省/PLATEAU「3D都市モデル、BIMモデル、空間IDを統合した都市開発支援ツールの開発
出典:国土交通省/PLATEAU「3D都市モデルを活用した高精度デジタルツインの構築
出典:国土交通省/PLATEAU「デジタルツインを活用したXRコンテンツ開発プラットフォーム
出典:国土交通省/PLATEAU「デジタルツインのカギを握る国際標準規格『CityGML』の可能性

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■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

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