- その他
2024.12.11
次世代移動通信ネットワーク「6G(Beyond 5G)」の特徴。今までと何が変わる?
2030年の商用化開始を目指す次世代の6G(Beyond 5G)。
次世代の通信技術として注目され社会実装が見えてきた6Gについて、本記事では6Gが求められる背景、今までの移動通信ネットワークと6Gの違い、6Gの導入で変化が予想される生活などについてご紹介します。
6G(Beyond 5G)が求められる背景
6Gとは、2030年頃の実用化が目指されている、5Gの性能をさらに進化させた次世代の移動通信システムです。
ここでは、6Gが求められる背景をご紹介します。
データトラフィックの増加
現代社会では、スマートフォンやIoTデバイスの普及により、データトラフィックが急増しています。
動画ストリーミング、オンラインゲーム、クラウドサービスなどの利用が増える中で、5Gの通信インフラでは対応しきれないほどのデータ量が発生していることが課題です。
そのため、より高速で大容量のデータ通信を可能にする6Gの導入が求められています。
6Gは、これらの増大するデータトラフィックを効率的に処理し、ユーザーに快適な通信環境を提供することが期待されています。
新しいアプリケーションの需要
6Gは、ホログラフィック通信や拡張現実(AR)、仮想現実(VR)などの技術を活用した、新しいサービスを支えるために必要です。
これらの技術は、エンターテインメント、教育、医療などの分野で革新的な体験を提供します。例えば、ホログラムを用いた遠隔会議や、ARを活用したリアルタイムのナビゲーション、VRを利用した仮想旅行などが実現できるでしょう。
これらのサービスを安定して提供するには、5Gよりも非常に高い通信速度と低遅延を実現する6Gの技術が不可欠です。
産業のデジタル化
製造業や農業、医療などの産業分野では、デジタル化(DX)が著しい成長を見せています。
6Gは、これらの分野で従来よりも円滑に複雑なリアルタイムデータ処理や遠隔操作を可能にし、効率化と生産性向上に寄与する技術です。例えばスマートファクトリーでは、機械やロボットがリアルタイムでデータを共有し、最適な生産プロセスを実現します。
また農業では、ドローンやセンサーを用いた精密農業が普及し、収穫量の増加や資源の効率的な利用が期待されている状況です。
医療分野では、遠隔手術や患者モニタリングが進化し、医療サービスの質が向上すると期待されています。
持続可能な社会の実現
6Gは、エネルギー効率の向上や低消費電力を実現し、持続可能な社会の構築に貢献する技術です。環境負荷を軽減しながら持続可能な発展を支援します。
例えばスマートシティでは、エネルギー管理システムが導入され、電力の消費を最適化できるでしょう。
また、再生可能エネルギーの利用が促進され、カーボンフットプリントの削減も期待されます。
さらに6Gの技術は、リモートワークやオンライン教育の普及を支え、交通量の削減や都市の混雑緩和にも寄与するでしょう。
出典:総務省「Beyond 5G(6G)に向けた技術戦略の推進」
移動通信ネットワークの変遷(1G ~ 5G)
移動通信ネットワークは、これまでにも多くの遍歴がありました。それぞれ特色が異なります。
ここでは移動通信ネットワークの変遷として、1G~5Gまでをそれぞれご紹介します。
1G(第1世代移動通信システム)の特徴
1Gとは、1980年代に登場したアナログ無線技術を用いた初の移動通信システムです。主に音声通話に利用され、ノイズが多く、盗聴のリスクも高かったことが課題でした。
日本ではNTTの「HiCAP」や、米国の「TACS」が主流でしたが、1999年にサービスを終了しています。
1Gのシステムは、音声のアナログ信号をそのまま電波に乗せて送信するため、通信品質は現在の基準から見ると低く、通話中に雑音が入ることが多いことが特徴です。また、通信の暗号化が行われていなかったため、盗聴のリスクが高く、セキュリティ面での課題も多く存在しました。
2G(第2世代移動通信システム)の特徴
2Gは1990年代に登場した移動通信システムで、デジタル無線技術を採用したことで音声通話の品質が向上し、データ通信が可能になったことが大きな特徴です。
SMS(ショートメッセージサービス)やインターネット接続が普及し、NTTドコモの「iモード」サービスにより、携帯電話でのメールやインターネットが広く利用されました。
2Gでは、音声信号をデジタル化して送信するため、通話品質が大幅に向上し、ノイズが減少したことも特徴です。
おもな技術にはPDC、cdmaOne、GSMがあり、これらの技術は世界中で広く採用されました。
3G(第3世代移動通信システム)の特徴
3Gは2000年代に登場し、国際標準規格「IMT-2000」に基づいて開発された移動通信システムです。W-CDMAやCDMA2000などの技術を採用し、世界中で広く普及しました。
3Gの登場によって、1台の携帯電話を世界中で利用できるようになり、通信速度も大幅に向上しました。また、最大受信速度は3.6Mbpsに達し、テレビや動画の視聴が可能になったことが大きな特徴です。さらにビデオ通話や高速インターネット接続も可能になり、モバイルインターネットの利用が急速に拡大しました。
4G(第4世代移動通信システム)の特徴
4Gは2010年代に登場し、LTE技術を基盤とすることで、通信速度が最大1Gbpsに達しました。
おもな技術としてはLTE-AdvancedやWiMAX2などが挙げられ、高い通信速度と低遅延を実現しているのが特徴です。スマートフォンの普及が進み、高速なデータ通信が可能になりました。
4Gの技術は、動画のストリーミングやオンラインゲーム、クラウドサービスの利用を快適にし、モバイルインターネットの利用体験を大きく向上させました。
5G(第5世代移動通信システム)の特徴
5Gは2020年代に登場し、通信速度が最大10Gbpsに達する超高速通信を実現した移動通信システムです。4Kや8Kの高精細映像のストリーミングや、リアルタイムの遠隔操作が可能になりました。
5Gの技術は、ミリ波やMassive MIMOなどを採用し、これまでにない高速かつ安定した通信を提供するのが特徴です。
5Gは、超低遅延や多数同時接続が特徴で、IoT時代の基盤技術として期待されており、自動運転車やスマートシティ、遠隔医療など、さまざまな新しいサービスやアプリケーションが実現されつつあります。
出典:総務省「第1部 特集 新時代に求められる強靱・健全なデータ流通社会の実現に向けて」
出典:総務省「第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」
6Gの具体的な特徴
6Gのおもな特徴は以下のとおりです。
- 通信性能の飛躍的向上
- 先進技術の統合
- 新たな通信領域の開拓
それぞれの内容を確認しておきましょう。
通信性能の飛躍的向上
6Gは、5Gに比べて通信速度や容量が飛躍的に向上します。具体的には、1Tbps(1,000Gbps)という驚異的な通信速度を実現し、5G通信よりも1,000倍、4G通信よりも100万倍速くなります。
また、遅延も1マイクロ秒以下という極めて短い遅延を実現し、5G通信よりも1,000倍短いことが特徴です。
リアルタイムでのデータ伝送が可能になり、遠隔医療や自動運転などの分野での活用が期待されています。
先進技術の統合
6Gは、人工知能(AI)や機械学習、エッジコンピューティングなどの先進技術を統合することで、よりスマートで効率的なネットワークを実現できることが特徴です。
通信ネットワークの役割が「コネクション」から「コンバージェンス」へと変わり、より高度なサービスの提供が可能となります。
特に近年では、複数のプロバイダが協調して耐障害性やサービス品質保証を確保する技術も開発されている状況です。
新たな通信領域の開拓
6Gは、これまでの通信技術ではカバーできなかった空・海・宇宙などの新たな通信領域を開拓できる技術です。
例えば陸上は全面カバーし、海上は200海里まで、空域は高度1万メートルにまで拡張し、さらに宇宙空間での通信も視野に入れています。
その結果、地球上のあらゆる場所での通信が可能となり、グローバルな通信インフラの整備が進むでしょう。
出典:総務省「Beyond 5G(6G)に向けた技術戦略の推進」
6Gの実用化による生活や社会の変化
6Gの普及は生活や社会に大きな影響を与えるとされています。
特に医療面では超高速・大容量通信による遠隔操作の手術用ロボットが可能となり、医療サービスの質が向上するでしょう。
また、通信エリアの拡大により、陸・海・空・宇宙にわたる安定した通信が実現し、災害時や遠隔地でも重要なインフラとなります。
消費電力やコストの削減によって、環境負荷も軽減することが可能です。
さらに、同時多数接続によりスマートシティやIoTの普及が進み、産業の効率化と安全性が向上するでしょう。
6Gはリモートワークやオンライン教育、スマートシティの実現、製造業や農業など幅広い分野でのデジタル変革を加速させ、新しいビジネスモデルやサービスの創出を促進し、経済発展を支えると期待されています。
6Gの普及に備えて新規事業やサービスの検討をしましょう
6Gは、2030年代に導入予定の5Gの性能を大幅に向上させた次世代移動通信システムです。
通信速度や容量が飛躍的に増加し、遠隔操作や医療分野での革新が進むと期待されています。
6Gは陸・海・空・宇宙にわたる通信エリアを拡大し、データトラフィックの増加や新しいアプリケーションの需要に対応できるでしょう。
また、産業のデジタル化や持続可能な社会の実現に向け、効率化と環境負荷の低減を推進し、経済発展を支えます。
あと数年後には6Gの時代がやってきます。6Gによって解消される課題をどのような「価値」として社会に提供できるのか、どのように取り組むべきなのか、私たちも模索途中ではありますが、技術力・表現力・発想力を働かせ考えていきます。
シリコンスタジオでは、リアルタイム3Dグラフィックスやクラウドサーバを活用したコンテンツ開発を支援しております。
ぜひ、シリコンスタジオへお気軽にご相談ください。
■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部
自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。
DXコラムは、デジタルツインやメタバース、AIをはじめ産業界においてトレンドとなっているDX関連を中心としたさまざまなテーマを取り上げることにより、デジタル技術で業務の効率化を図ろうとする方々にとって役立つ学びや気付き、ノウハウなどを提供するキュレーション(情報まとめ)サイトです。