AIによる画像認識とは?その仕組みと技術を解説

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2024.10.25

AIによる画像認識とは?その仕組みと技術を解説

1993年頃からの第3次AIブームにより、企業でもAI技術を業務に取り入れて活用されるようになりました。そして近年は、ChatGPTなどの生成AIが登場したことによって、以前にも増して社会に浸透してきています。
数々のAIの業務活用のなかでも、画像認識はさまざまなシーンで活用されている状況です。

本記事では、AIによる画像認識とはどのようなものなのか、手法やどのようなことができるのか、活用事例などをご紹介します。

AIによる画像認識とは

AIによる画像認識とは、コンピューターが画像を解析し、その内容を理解・分類する技術です。画像認識は、機械学習や深層学習(ディープラーニング)を用いて実現されます。
機械学習とは、ヒトが行う学習能力と同様の機能をコンピューターで実現する技術です。コンピューターは大量のデータから指定したアルゴリズムを元に特徴を発見し、その特徴に基づいて最適化や推論、判断などを自動的に行います。

一方、深層学習とは、ニューラルネットワーク(ヒトの脳神経系のニューロンを数理モデル化した、データを学習させる技術)を利用して、複雑なデータの特徴を学び取る機械学習の手法です。ヒトの脳の神経回路を模倣した多層のネットワークを活用し、さまざまなデータから特徴を抽出します。ニューラルネットワークが多層構造を持つことで、より高度なデータの特徴を深く学習できる点が特徴です。

AIによる画像認識のおもな特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

高速処理

AIによる画像認識技術は、近年急速に発展しており、高速処理が実現されています。例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、画像処理において主要なモデルです。近年、筑波大学の研究により、CNNのサイズを28倍も小さく圧縮し、処理速度を76倍高速化できることが発表されました。また、iPhoneのFace IDによるロック解除など、スピードが求められるシーンにおいても、AIによる画像認識が活用されています。

高精度

近年、AI技術の進歩により、画像認識技術の精度が劇的に向上しています。機械学習や深層学習の発展により、画像内の対象物を正確に識別できるようになりました。AIは転移学習と呼ばれる手法を使って2段階で学習することが一般的です。まず、大量の汎用的なデータで基礎的な認識能力を養い、次に特定用途のデータで再度学習させます。さらに、事前学習済みのAIを特定用途のデータで追加学習させることで、高精度の画像認識AIを実現することが可能です。

自動化

AIによる画像認識は、従来はヒトが行っていた業務を機械に代行させたり、サポートしたりすることが可能です。例えば製造業における品質検査では、AIが製品の画像を自動で確認し、欠陥を迅速に見つけ出せます。これによって、人件費の削減に加え、エラーの発生率を低減できることがメリットです。またAIによる画像認識を活用することで、人流を測定してマーケティングに活用することや、ドローンによる農作物の育成状況分析、自動車の自動運転技術など、新たなビジネスモデルや業務プロセスの確立にもつながります。

拡張性

AIによる画像認識は、その拡張性も大きな特徴です。画像認識モデルは、多様な画像データを学習することで、未知のデータに対しても高い精度で対応できるようになります。学習データを増やすために、元の画像を変換したり、合成したりするデータ拡張により、さまざまなバリエーションの画像を理解できる点が特徴です。そのため、AIによる画像認識は、自動運転車の障害物検出、医療画像診断、セキュリティシステム、顔認識など、多岐にわたる分野で活用されています。

AIによる画像認識における2つの学習アプローチ

AIによる画像認識には「教師あり学習」と「教師なし学習」の2つの識別方法があります。ここでは、それぞれの識別方法の特徴を確認しておきましょう。

教師あり学習

教師あり学習とは、教師データと呼ばれる正解ラベルを持つデータセットを用いて学習する方法です。具体的には、画像内の対象物を識別するために、膨大な数の画像データをAIに読み込ませ、正解データを参考にして学習させます。精度が高く、運用も容易な点が、教師あり学習のメリットです。

教師データと学習プロセス
教師あり学習は、以下の学習プロセスによって実現されます。

1.教師データの準備
教師あり学習では、正解ラベルが付与された「教師データ」と呼ばれる画像データを用意しなくてはなりません。例えば、猫の画像を「猫」とラベル付けしたデータセットを作成します。

2.学習アルゴリズムの選択
機械学習アルゴリズム(ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワークなど)を選択します。

3.学習プロセス
アルゴリズムは、教師データを使って学習を進めます。画像の特徴を抽出し、正解ラベルとの関連性を学習します。

4.モデルの評価
学習が進むにつれて、モデルの精度を評価します。トレーニングデータとテストデータを使ってモデルの性能を確認します。

教師なし学習

教師なし学習とは、正解データを与えずに画像データを解析する方法です。データの持つ特徴や構造を自動的に抽出します。

特徴の自動抽出
教師なし学習では、画像内の特定のパターンを直接検出するパターンマッチングという手法が用いられます。例えば、特定の形状や色を持つ物体を識別する際に有効です。次にクラスタリングによって、似た特徴を持つ画像をグループ化します。これにより、データの共通点や異なる側面を把握できるようになります。

AIによる画像認識で可能になること

AIによる画像認識

AIによる画像認識を社会実装することで、どのようなことが実現できるのでしょうか。
ここでは、AIによる画像認識で可能になることをご紹介します。

物体分類

物体分類とは、画像内の物体をカテゴリ別に正確に分類して、何が映っているのかを識別する技術です。AIはトレーニングデータから学習し、新しい画像で物体を識別します。例えば、猫、犬、自動車、飛行機などの物体を高い精度で識別することが可能です。また、自動運転車両の障害物検出や画像検索エンジンのタグ付けにも活用されています。

シーン認識

シーン認識とは、画像全体の文脈を理解し、風景や建物、屋内、自然などのシーンを識別する技術です。画像に映っているものを特定するだけでなく、どの場所に映っているのかも特定できます。例えば、監視カメラの映像から異常な活動を検出したり、自動運転車両が周囲の状況を理解したりする場合に役立ちます。AIは画像の特徴を解析して、シーンを正確に分類することが可能です。

物体検出

物体検出は、画像内の特定の物体の位置、種類、個数を検出する技術です。何がどこに映っているのかを特定します。例えば、スマートフォンの顔認識機能や医療画像から病巣を検出する際に利用されます。AIは画像内の複数の物体を同時に検出し、それぞれの位置を特定することが可能です。

領域検出

領域検出は、物体検出の一歩進んだ技術です。AIが物体の位置などをバウンディングボックス(長方形の枠)で囲むことで、その領域を特定します。例えば、山と川の画像があった場合、「ここが山」「ここからが川」などのように、分類することが可能です。領域検出は、おもに医療画像診断や自動運転の歩行者検知などで活用されています。例えば、脳のMRI画像から腫瘍の位置を特定する場合、領域検出が有用です。

AIによる画像認識を活用した事例

AIによる画像認識は、すでに多くの用途で活用されています。
ここでは、AIによる画像認識を活用したさまざまな事例をご紹介します。

顔認証システム

AIによる画像認識を活用した、代表的な事例が顔認証システムです。顔認証技術は、セキュリティやアクセス制御にも広く活用されています。例えば羽田空港は、外国人の入国手続きに多くの人員を割いていたため、日本人帰国者の入国手続きを簡素化するために顔認証ゲートを導入しました。このシステムは老化や化粧、表情による顔の変化も認識し、共連れなどの不正も検知してアラートを出すのが特徴です。

製造業での品質管理

AIによる画像認識は製造業での品質管理にも活用されています。JFEスチール株式会社は、製鉄所における安全管理にAI画像認識技術を導入しました。従来は人の手で行われていた業務をサポートし、作業者の安全行動をサポートしています。例えば、溶接の欠陥や異常な部品を自動的に検出することで、品質向上と効率化を実現しているそうです。

自動運転

自動運転の車にも、AIによる画像認識が活用されています。自動運転車両は、カメラやセンサーを使用して周囲の状況を認識し、適切な判断を下せるのが特徴です。AIによる画像認識によって道路標識や信号、歩行者、車両などを検出し、運転支援や自動運転に活用されています。例えば、歩行者の検出により、衝突回避のアラートを発信することが可能です。

セキュリティ

防犯カメラ映像の人物検知や不審行動検知といったセキュリティ分野においても、AIによる画像認識が活用されています。犯人の特定を早めたり、事件を未然に防いだりすることが可能です。例えば、夜間の監視カメラで不審な動きを検出して警備員に通報するシステムがあります。

農業

農業においても、AIによる画像認識が広く活用されています。例えば、ドローンによる作物の健康状態モニタリングです。ドローンは広大な農地を短時間で撮影し、その画像データをAIで解析します。AIはこれらの画像をもとに、作物の成長状況や水分量、栄養不足のサインなどを識別し、農家に重要な情報を提供することが可能です。

SNSやフォトアプリ

AIによる画像認識技術は、写真アプリやSNSで顔認識やオブジェクト検出にも活用されています。例えば、写真をアニメキャラクターに変換したり、低画質な画像を高画質化したりすることが可能です。

シリコンスタジオではAIによる画像認識のための学習データ提供が可能

シリコンスタジオでは「BENZaiTEN(ベンザイテン)」のブランドで、3DCGを活用したAIによる画像認識のための学習データや画像生成システム、検証環境などをご提供します。外観検査や設備監視・認証、自律走行・運転支援、人物認識などの用途に教師画像として利用できるデータや学習・検証環境を、ゲームエンジンによるリアルタイム3Dグラフィックス技術で実現します。

BENZaiTENに含まれるおもなサービスと用途は、以下のとおりです。

不良品判定用CG生成

製造過程で発生しうる傷や欠損などの不良をCGで再現し、機械学習による外観検査で必要なNG教師画像として活用できます。

人物(顔・表情)認識用CG生成

さまざまな光源環境での人物の顔や、表情をCGで生成します。年齢、性別、人種などさまざまなバリエーションを用意することが可能です。学習データとして肖像権を気にせずに利用することができます。

組立て部品・パーツ認識用CG生成

組立て部品の選別や商品仕分けを行うロボットアームなどの学習に利用できるCG画像を生成します。部品の種類や数、配置を自在に設定することが可能です。

学習用シーン映像CG生成

さまざまな事象が発生しているシーンをAIに学習、検証させるためのリアルタイム3DCGを用意します。炎や樹木、複数の人物などを配置し、悪天候の再現や事故などの際限が難しい複雑なシーンも対応可能です。

教師画像用CG生成ツール/シミュレーション環境開発

お客様の機械学習システムに合わせた教師画像用CG生成ツールを開発します。AIエンジンと連動するシミュレーション環境も構築可能です。

関連ページ:Silicon Studio「機械学習向け教師画像ソリューション

AIによる画像認識を取り入れていきましょう

AIによる画像認識とは、機械学習や深層学習を活用して画像を解析し、その内容を理解・分類する技術です。高速処理や高精度な認識、自動化と拡張性が特徴で、顔認証システムや自動運転、品質管理、セキュリティ、農業など多岐にわたる分野で活用されています。また、教師あり学習と教師なし学習の2つの識別方法があり、AIは物体分類やシーン認識、物体検出などを実現しています。AIによる画像認識を活用し、生産性の向上につなげてみてはいかがでしょうか。

シリコンスタジオでは、「デジタル分野」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。AIによる画像認識のための学習データをお求めの方は、お気軽にご相談ください。

■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

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