点群データとは?取得方法や活用事例を紹介

建築・土木業界

2024.08.09

点群データとは?取得方法や活用事例を紹介

近年、点群データがさまざまなシーンで活用されています。
建築・土木をはじめとした産業界の課題を解決していくために、点群データの活用は欠かせません。

本記事では、点群データがどのようなものであるか、点群データを取得する方法や活用事例などをご紹介します。

点群データとは

点群データは、空間内に存在する多数の点(点群)の座標と、それらの点がもつ「位置情報」と「色・輝度情報」を含むデータです。
手軽に利用できるデバイスや技術の発展、国土交通省の「i-Construction」施策推進の影響もあり、3次元レーザースキャナーによる点群データの計測・収集が普及しはじめています。

近年、その情報量や精度が格段に上がり、さまざまな分野で活用が広がっている状況です。
自動運転車やさまざまな測量、災害の可視化と分析に役立つだけでなく、観光や文化財のアーカイブ、エンタメなど、社会全体に応用される可能性も期待されています。

点群データの特徴

点群データは、数千万以上の3次元座標 (x, y, z) の情報をもつ点が集まり、3次元上に表現されます。
主に3Dレーザースキャナーによって収集され、物体や環境の3次元形状を表現することが可能です。

その他の主な特徴としては、以下が挙げられます。

位置情報と色・輝度情報を持つデータ

点群データは、座標情報だけでなく、各点の色や輝度情報も含んでいます。
そのため、物体の正確な3Dモデルを作成する基盤となりうるのが特徴です。

精密な測量が可能

点群データは細かい部分まで精密に表現できるため、ミリ単位の測量にも活用できます。

多様な分野での活用

建設、製造、自動車をはじめ観光、エンタメ業界など、さまざまな分野で点群データが活用されています。

ただし、点群データを活用する際は、導入コストやデータの変換などの課題も考慮しなくてはなりません。

点群データが注目される背景

近年、点群データの活用が増えてきた背景には、以下のようなことが挙げられます。

業務効率化とコスト削減

点群データを利用することで業務の効率化やコスト削減が期待できます。
例えば、点群データを用いて設備の干渉チェックを行い、設計業務の工数と期間を約80%削減できた事例もあるようです。

人の立ち入りが困難な場所の測量が可能

点群データは機器によって遠隔地からでもデータを取得できるため、現場に行かずに危険な場所での測量が可能になり、労働災害のリスクを減らせます。
また、狭小空間など人が立ち入ることができない場所も、小型のドローンやロボットを使うことにより、測定することが可能です。

図面がなくても3Dモデルを作成可能

点群データを使用すると、図面がなくても現場の測量データから直接3Dモデルを作成することができます。

2Dの図面化が可能

点群データから建造物の寸法や形状を把握できるため、2D図面(平面図、立面図、断面図)に変換することができます。

多様な分野での利用

点群データはおもに3Dレーザースキャナーで収集され、物体や環境の3次元形状を表現します。
点群データは測量時点でデジタル化されているため、ICTが進むさまざまなシーンで活用しやすいのが大きなメリットです。

点群データの測定方法・取得方法

点群データの主な測定方法は、下記のとおりです。

  • 航空型のドローンによるレーザー測量
  • 地上設置型の3Dレーザースキャナーを利用した計測
  • 移動型のレーザースキャナーを搭載した車・機器を利用した計測

それぞれの内容について、以下で解説します。

航空型のドローンによるレーザー測量

ドローンを使用して空中からレーザー光を照射し、地形や建物の点群データを収集します。
広範囲の地域をカバーでき、迅速なデータ収集が可能です。

また、ドローンは地形の起伏に関係なく飛行できるため、山岳地帯や森林地帯など、人によるアクセスが困難な場所でもデータ収集できます。

地上設置型の3Dレーザースキャナーを利用した計測

3Dレーザースキャナー

3Dレーザースキャナーを建物や地面に設置し、物体表面をレーザーでスキャンして点群データを生成します。
非常に高精度なデータを得られるため、正確な3Dモデル作成に適しているでしょう。
建設現場での施工管理や製造業界での品質管理、自動車業界での安全性評価など、さまざまな分野で利用されています。

移動型のレーザースキャナーを搭載した車・機器を利用した計測

モービルマッピングシステム(MMS)は、車両に搭載された3Dレーザースキャナーやカメラなどの計測機器を活用して、道路や周辺の環境データを収集する技術です。
遠隔地でもデータを取得でき、労働災害のリスクを減らしつつ、危険な場所での測量を実現します。
道路の状態や交通量、建物の配置など、都市計画や交通政策の策定に必要な情報を提供することも可能です。
また、配管内や狭小地などを計測する場合、3Dレーザースキャナーを搭載した小型の移動型ロボットが使われるケースもあります。

点群データを活用するユースケース

点群データは、さまざまなシーンで活用されています。
ここでは、点群データを活用するユースケースをご紹介します。

リバースエンジニアリング

リバースエンジニアリングとは、既存の製品や構造物を分析し、その構造や仕組み、製造方法を明らかにする手法です。
3Dスキャナーによる点群データは、このプロセスに必要な情報を高精度でサポートします。
自社製品の改良や競合他社の製品分析など、多様な活用が可能になるでしょう。

高速道路、橋梁、トンネルなどインフラ整備や設営検討

橋梁 点群活用

点群データは、都市高速道路や橋梁、トンネルなどのインフラ整備や設営検討にも活用されています。
3Dレーザースキャナーで取得した点群データから3D都市モデルを自動生成する技術が開発され、これにより道路インフラの管理・保全業務が効率化されています。

災害による被害確認

災害査定とは、台風や地震などの被災地域を訪問し、被害の状況や復旧に向けた手段を確認する作業です。
災害時には、被災現場の状況を点群データとして生成することで、被害の状況をより効率的に把握できます。
人力で行われていた災害査定が効率化され、より正確な被害評価が可能です。

工場設備などの配置・設計検討、保守メンテナンス

日本全国の老朽化した工場の多くでは、古い紙の図面しか残っておらず、設備の配置変更に必要な3Dデータが不足しています。

この課題に対処するため、3Dスキャナーが注目されています。
工場内の複雑な配線や設備でも、迅速かつ高精度に計測し、3D図面を作成できる点が特徴です。
設備の配置換えや復元の参考になるだけでなく、新しい工場建設の際の重要な検討材料として活用されています。

有形文化財のデジタルアーカイブ化

3Dスキャナーの点群データは、有形文化財のデジタルアーカイブ化に重要な役割を果たしています。

例えば城や寺社、工芸品、美術品などの貴重な遺産は、時間が経つにつれて劣化し失われる可能性が高いです。
しかし点群データとして保存すれば、その情報を将来に伝えられます。
美術品や建築物のデジタルアーカイブ化が可能になり、後世に優れた遺産を継承する一助となります。

点群データを活用した具体的な事例

実際に、点群データはどのように活用されているのでしょうか。
ここでは、点群データを活用した具体的な事例をご紹介します。

公共:東京都デジタルツイン実現プロジェクト

東京都デジタルツイン実現プロジェクト

出典:東京都デジタルツイン 3Dビューア
(https://3dview.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/)

2030年の完成を目指している東京都のデジタルツイン実現プロジェクトでは、点群データの取得と整備が進められています。これにより、3D都市モデルの作成や3Dビューアの高度化が図られています。
点群データは、建物や道路などのインフラ、経済活動、人の流れなどをサイバー空間上に再現するための基礎データとして利用され、「都市モデルの作成や3Dビューアの高度化」という方針により、測量や図面への代替や、地理空間情報として点群データ以外を含む複数の外部データを単一ビューアで閲覧可能とする取り組みが図られています。それにより、都庁職員の生産性向上、行政サービスの効率化、高度化、都民のQoL向上が目指されています。

建築:既存建物のBIMデータを作成

点群データを活用することで、既存の建物の3Dモデルを作成することが可能です。
建物の詳細な形状や構造を正確に把握でき、3DレーザースキャナーやLiDARなどから取り込んだ3D点群データの加工・編集・合成を行えます。

これらの情報は、既存の建物の状態を詳細に把握し、リノベーションや改修の計画を立てる際に役立つでしょう。

製造:仮想空間での作業計画の策定

製造業では、事前に作成した点群データを活用してデジタルツインの作成や仮想空間での作業計画の策定が行われています。
製品の設計や生産ラインの最適化、さらには製品の性能評価や故障予測など、製造プロセス全体を効率化することが可能です。

自動車・モビリティ:自動運転環境

自動運転車が公道を安全に走行できるようにするためには、3次元点群データの活用が欠かせません。
国が保有している情報を積極的に民間企業に提供することで、早期な自動運転向けマップデータの整備につながります。

文化:デジタルアーカイブ

デジタルアーカイブは文化分野で幅広く活用されています。
例えば国立西洋美術館では、3Dデジタルデータを用いて建物の詳細を伝えています。
京都文化博物館では、文化財を3D計測し、来訪者にVRを使った展示や3D解説映像を提供している状況です。
福島県富岡町では、震災で被災した建物を3Dデータでアーカイブし、震災の記録を残し、松江高専では鉱山坑道の研究に3次元計測を活用しています。

シリコンスタジオでは「点群データ活用」の支援が可能

シリコンスタジオでは、点群データをビジネスに活用するためのサポートを行っています。

点群データの活用として、メッシュ(ポリゴン)データへの変換やノイズ除去による3Dモデル化、BIM・CIMデータとの重畳表示、その他の3Dデータを活用したVRによるシミュレーション環境構築など、ゲームエンジンの活用によるさまざまな可視化手法でお客様のニーズにお応えします。

関連ページ:Silicon Studio「点群データ/BIM・CIMデータ活用支援

点群データをビジネスに有効活用しよう

点群データは、空間内の多数の点の座標と色・輝度情報を含むデータで、3Dレーザースキャナーなどで取得します。
これらのデータは、建築、製造、自動車業界などで活用され、物体や環境の3次元形状を表現することが可能です。

また、既存の建物の3Dモデル作成や、製造プロセス全体の効率化、自動運転向けマップデータの整備、文化財の3D計測などにも活用されています。
しかし、導入コストやデータの変換などの課題も存在するため、慎重な検討が必要です。

シリコンスタジオでは、「建築・土木業界」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
建築・土木業界の課題に直面している事業者の方は、シリコンスタジオのBIM/CIMソリューションにお任せください。

■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

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