建設DXにおけるBIM活用のメリット。CADとの違いや代表的なツールを紹介

建築・土木業界

2024.07.05

建設DXにおけるBIM活用のメリット。CADとの違いや代表的なツールを紹介

BIMの活用は多くのメリットが得られるため、日本でも導入する建設企業が増加の傾向です。
建物の維持管理や、都市計画の検討など、さまざまなシーンで用いられています。

本記事では、BIMの特徴や3D CADとの違い、BIM活用推進の背景と流れ、BIMの種類、BIMの活用メリット、BIMの活用事例についてご紹介します。

建設業におけるDX

建設業は、海外や他産業と比較してもIT化が遅れているといわれてきました。
しかし近年、大手ゼネコンを中心としてDXに取り組む企業が増えています。

建設業における主なDXの取り組みは、以下のとおりです。

IoT(Internet of Things)の活用

建設現場では、インターネットに接続されたセンサーやデバイスといったIoTにより、データを収集できる環境が整ってきました。
こうして収集されたデータを活用することで、施工中の進捗管理や設備の遠隔監視が可能です。
クレーンの稼働状況や材料の在庫などをリアルタイムに把握することができます。

クラウドコンピューティングの導入

クラウドを活用することで、膨大なデータを効率的に管理することが可能です。
設計データや施工図面、現場写真などをクラウド上で共有し、関係者がリアルタイムにアクセスできる環境を整備しています。

AI・機械学習の活用

建設業ではAIや機械学習を用いて、施工計画の最適化や材料の最適配置も行われています。
例えば、材料の運搬ルートを最適化することで、効率的な施工が可能です。

これらの取り組みにより、建設業では従来のアナログな作業からデジタル化への転換が進んでいる状況です。
そして、建設業界でDX推進に大きく寄与するとされている「BIM活用」も進んでいるため、次章で解説します。

BIMとは

BIM(Building Information Modeling)とは、建物の設計、施工、運用において3Dモデルを活用する手法です。
BIMを使用することで、設計段階から施工、運用までのプロセスを効率化できます。

大手ゼネコンは積極的にBIMを導入し、建物のデジタルツインを作成している状況です。
一方、国土交通省は、令和5年に「小規模を除くすべての公共事業へのBIM/CIMの原則適用」を実施することを発表しました。

BIMを活用することで、3次元の建物デジタルモデルにコストや管理情報といった各種属性データを追加できます。
建設業においては、 BIM をさまざまな場面で活用することにより、高品質・高精度な建築生産・維持管理等の実現や高効率なライフサイクルの実現などを通じた生産性の向上、ビッグデータ化やインフラプラットフォームとの連携など、幅広い展開による社会資産としての建築物の価値の拡大が期待されています。

出典:建築BIM推進会議「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン
出典:国土交通省「令和5年度のBIM/CIM原則適⽤に向けた進め⽅

BIMと「CAD」「3D CAD」の違い

BIM CAD

CADは主に2Dおよび3Dの設計図を作成するためのツールで、設計図を一から作り上げる「製図」に主眼を置いています。
一方BIMは、「情報」に主眼を置き、3Dモデルに各種の情報を付加することで、設計だけではなく施工、メンテナンスなどにも活用可能なデータを作ることができるのが特徴です。

以下で、具体的な違いをご紹介します。

モデリングアプローチ

CADは、2Dおよび3Dの図面を作成するために、基本的に2Dから3Dに向けて設計を進める手法を採用しています。
つまり、2Dの図面を作成した後、それを基に3Dの形状を組み立てていくのが特徴です。

BIMは、部材ごとに3Dモデルを作成します。
柱や壁などの建材ごとに立体的なモデルを構築するアプローチです。
BIMモデルはオブジェクトの集合体であり、幅や奥行き、高さに加えて素材や組み立てる工程などの情報を盛り込めます。
さらに、設備機器の詳細情報(品番・メーカー・価格など)も入れられるため、メンテナンスや資材管理にも活用できるのがメリットです。

情報の一元管理

CADは設計の初期段階で使用され、主に2Dおよび3Dの詳細な図面を作成します。
しかし、情報の一元管理は行いません。

BIMは、設計、施工、運用、メンテナンスの各フェーズにおいて使用される情報を一元的に管理できます。
BIMモデルは属性情報(数量・仕様・色など)を持ち、関連ソフトウェアで利用することが可能です。
修正が入っても関連する部分は自動反映され、図面間の整合性を保つことができます。

業務効率化とイノベーション

CADは設計図面の作成に特化しており、基本的な製図作業をサポートします。
BIMは、BIMツールで3次元モデルを作成し、建築ライフサイクル全体で蓄積された情報を活用する画期的なワークフローです。
BIMモデルでは、修正を行えば平面図、立面図、断面図、屋根伏図、パース、面積表、数量表などすべてが自動修正され、手戻りに費やす時間を圧倒的に削減できます。

したがって、BIMは設計から施工、維持管理に至るまでの建築プロセス全体で情報を一元的に管理し、効率化とデザインのイノベーションを実現するための画期的なアプローチです。

BIMの活用事例

実際の建設業において、BIMはどのように活用されているのでしょうか。
ここでは、BIMの連携における6つの活用事例をご紹介します。

活用事例①:積算

BIMには使用部材の名称や寸法、価格、材質、性能、数量などの情報が含まれています。
積算システムと連携すれば、その情報を活用して自動での積算が可能です。
上記を行うことで、作業効率が向上します。

活用事例②:構造計算

BIMの情報を構造計算ソフトに連携すれば、簡単に構造計算ができます。
2次元の構造図も3次元のBIMから切り出して作成でき、整合性のある図面作成が可能です。

活用事例③:施工

BIMと連携することで、クレーンの施工計画などを高い精度で出すことが可能です。
正確で無駄のない施工計画が可能で、仮設足場の施工計画もスピーディーに作成できます。

活用事例④:設備

BIMと連携して3次元で設備を可視化することで、干渉や納まりの問題を回避しやすくなります。
施工現場での手戻りを少なくし、設備の維持管理にも有効です。

活用事例⑤:シミュレーション

BIMと連携することで、気流や温度、清浄度、日陰、照明、眺望、避難経路などの解析が可能です。
省エネルギーのシミュレーションも行えます。

活用事例⑥:ビジュアライゼーション

BIMの強みは、なんといってもビジュアライゼーション(可視化)にあります。
TwinmotionやLumionのような建築ビジュアライジングツール 、Unreal EngineやUnityといったゲームエンジンなど、レンダリング機能を備えたソフトと連携することで、高品質な3Dビジュアライゼーションが可能です。
バーチャル空間を作成し、点群データとの重畳表示やVRによるウォークスルーなど、設計段階での完成イメージの共有・確認するためのアプリケーション構築も容易に実現させることができます。

BIM活用に必要な技術・ツール

日本国内で提供されているBIMモデル作成を目的としたツールをピックアップしました。
ここでは、特徴や利用されることが多い分野についてご紹介します。

Autodesk Revit

Autodesk Revitは「要素タイプ>ファミリ群>ファミリ」という階層構造のデータ構成に基づき、各部材に属性を付与することで、パーツのデータ情報を活用し、トータルなBIMの作成・管理を行えるツールです。
意匠、構造、設備、施工、管理と幅広く連携し、大規模プロジェクトにも対応しています。

ArchiCAD

3Dオブジェクトの内部ライブラリを有しており、中小規模のプロジェクトでの概念を持っているツールです。
意匠設計者も導入しやすいでしょう。

GLOOBE

GLOOBEは、逆日影斜線計算機能により、最大容積形状のモデルを可視化しながら設計が可能なツールです。
日本の建築基準法に対応しやすくなっています。

VectorWorks

VectorWorksは、MiniCad時代よりアップグレードしてきたツールです。
2D機能も充実しており、使いやすさからデザイン事務所などで根強い支持を得ているのが特徴です。

Rebro

Rebroは、国内外のBIMソフトウェアと連携できるプラットフォームで、データの共有やワークフローの最適化に役立ちます。
排煙計算や部屋諸元の管理、クラウドストレージ対応などの機能が特徴です。

シリコンスタジオではBIMを活用した建設DX支援が可能

シリコンスタジオは、BIMを活用した建設DXをサポートします。

例えば村本建設様では、施工検査の効率化が課題でした。現場で取得した点群データをBIMデータと重畳表示する進捗管理のワークフローを構築し、多人数・多拠点でのレビュー環境を構築しています。これにより、遠隔の複数拠点から設計データと施工状況の差異を確認できるようになり、施工検査の効率化を実現しています。

冒頭で説明した通り、BIMは部材の数量や仕様、色などの属性情報を持っているため、BIMデータを活用した工事の進捗管理ではデータ容量の大きさが使いにくさの一因となります。村本建設様の案件では、3Dグラフィックスで見せるという目的に応じて不要な情報を除去することにより軽量化を図りました。

関連ページ:Silicon Studio「BIM・点群データ重畳表示/多人数・多拠点設計レビュー

BIMを導入して建設業の業務効率化を促進

BIMは、建物の設計から施工、運用までのプロセスを効率化するための3Dモデルを活用する手法です。
BIMの導入による1番の活用メリットはビジュアライゼーション(可視化)にあります。
BIMのビジュアライゼーションによる遠隔での施工状況確認などの事例も存在します。
BIMを導入し、建設業の業務効率化を実現してみてはいかがでしょうか。

シリコンスタジオでは、「建築・土木業界」の課題を解決するDXソリューション・技術を数多く提供しております。
建築・土木業界の課題に直面している事業者の方は、シリコンスタジオのBIM・CIMソリューションにお任せください。

■著者プロフィール:シリコンスタジオ編集部

自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力(Technology)、表現力(Art)、発想力(Ideas)の研鑽を積み重ねてきたスペシャリスト集団。これら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられることを強みとしている。

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